問われる「ヘイトスピーチ対策担当」の資質

自民党ヘイトスピーチ・プロジェクトチームで座長代理を務める柴山昌彦衆議院議員(埼玉8区)がテレビ番組で行った発言に対し、ネット上で非難の声が上がっている。

柴山議員は2日夜放送されたテレビ朝日「TVタックル」で、同性婚について議論する過程で次のように発言した。

(区内在住者を対象とした仕組みとして提案されている渋谷区の「同性カップル登録制度」について)

「…渋谷区の中で議論することなのか、それともやはり全国的にね、地域ごとに文化とかそういうのの違いがあるかも知れないけど、やっぱりそういう家族制度って全国的に議論をすることじゃないですか。そうしないとそれこそ渋谷にそういう人たちが集中するとかね、そういうことだってあるわけです」

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(渋谷に同性愛者がたくさん住んでいたらどういう問題があるかという質問に対して)

「問題があると言うよりも、まあやっぱりそこに社会的な混乱というのは…」

(同性婚が少子化を防ぐのかという議論で)

「同性婚を制度化したときに少子化に拍車がかかるんじゃないかと」

これに対してネット上では「同性婚を制度化して少子化に拍車がかかる」というのはデマでありヘイトスピーチである、という批判が噴出している。

また、柴山議員は自身の発言に抗議するツイッターユーザーが「ネトウヨ」と呼ばれるユーザーの発言に罵倒ツイートで応じたことに対して、突然「それはヘイトスピーチだ」と指摘した。

それに対して「罵倒とヘイトスピーチは違う。ヘイトスピーチ・プロジェクトチームの座長代理なのにヘイトスピーチの定義がわかっていない」とツイッター上で激しい批判を呼んだ。

同性婚は少子化の要因になる!?

「同性婚は少子化の要因となる」というレトリックは、同性婚をめぐる議論が日本より数十年早く始まった西欧諸国では使い古されたものだ。

世界銀行の統計によると、同性婚やそれに準じる「シビルユニオン」を導入したオランダ、フランス、フィンランドなどでは出生率は上昇傾向にあり、ドイツ、スウェーデン、イスラエルなどは横ばい、アルゼンチン、ハンガリーなどでは低下傾向にある。(出典:牧村朝子「百合のリアル」129ページ)

出生率が低下傾向にあるアルゼンチンやハンガリーのケースでも、要因は経済低迷や社会混乱などにあると思われ、同性婚の導入が影響を及ぼしたと考える向きは少ない。

そもそも、同性愛者が「婚姻」を認められたいと望む主な理由は、社会保障面でのデメリットを解消することにある。現行法制下では、異性間で結婚した人々に認められている様々な権利や仕組みから、同性愛者の「家庭」は排除されているからだ。

つまり、同性間でパートナー関係になった上で「婚姻」を望むのであって、結婚したいから同性どうしで恋愛をするわけではない。婚姻が認められようが認められまいが、そうした人々が同性のパートナーを選ぶことに変わりはないのであって、それが少子化の進行に影響するなどありえるはずがないのだ。

少数者の「幸福追求」を制限

柴山氏のモノの考え方の問題点は、「婚姻は男女の間でするもの」という多数者から見た「当たり前」を少数者にも押しつけ、それと同時に、少数者の幸福を追求する権利を制限してはばからないところにある。

少子化の原因はむしろ、異性間でパートナー(婚姻関係を含む)となっている人々の間でさえも、子作りが進まない現実の中にある。

こうした現実を二重三重に履き違え、少数者の権利制限さえ厭わぬ物言いをする思考は、現実とは何の脈絡もなく被害妄想ベースで発生するヘイトスピーチと何ら変わるところがないのではないか。

先週末に愛知県犬山市で行われた犬山春節祭に対する在特会愛知県支部のヘイトスピーチ街宣
先週末に愛知県犬山市で行われた犬山春節祭に対する在特会愛知県支部のヘイトスピーチ街宣(画像:読者提供)

先週末、愛知県犬山市では「頑張れ日本!全国行動委員会」愛知県本部や「在日特権を許さない市民の会」愛知県支部が、犬山城前広場で行われていた犬山春節祭の会場の目の前で土曜日と日曜日の2日間にわたり、ヘイトスピーチを伴う街宣活動を行った。

現場を通りかかった会社員の男性は、「嫌がらせの街宣活動に加え、通行人らに掴みかかるなどの行為も行われていた。行楽ムードが台無しになってしまった」と話す。

現在もなお、根深い社会の病根として横たわるヘイトスピーチ。その対応策を考える自民党プロジェクトチームの座長代理がヘイトスピーチの定義も理解していないようでは、今後の対策の進展が危ぶまれる。

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