平壌市内の通り(本文とは関係ありません)©Roman Harak
平壌市内の通り(本文とは関係ありません)©Roman Harak

建設現場で使うから車を差し出せ

北朝鮮当局が今年に入り、住民に対して所有している車やバスなどの車両を国に自発的に献納するように強いていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。体制としては資本主義を否定しているのに、運輸業の生産手段である車両の違法な所有が、富裕層を中心にがっているためだという。

献納の対象はトラック、バス、小型トラクター、三輪バイクなど荷物の運搬に使えるものだ。労働党創建70週年を迎え、各種イベントやプロパガンダを兼ねた建設事業が目白押しの今年、あちこち建設現場で運搬手段の需要が急増しているためだ。

トラックやバスなどは実質的に個人所有であっても、形式上は工場や企業の所有となっている。当局から動員がかかれば応じざるを得ないが、所有者たちは巧妙な知恵をひねり出しながら抵抗している。

北朝鮮当局は車両を動員または没収したとしても、工場や企業所の自動車やバス用のガソリンや部品を供給する能力がない。当局がそれらの車両を動員しようとする前に所有者は主要な部品を取ってしまう。

そうして「故障で動かない」と言えば、動員から免れることができる。人々は「どうせこんな措置は長続きしない」とうやむやになるのを待っているという。

オートバイについては生産手段扱いではないが、1世帯あたり1台以上の所有は禁じられている。北朝鮮の人々は一般的に見栄っ張りで他人よりいいものを持っていることを自慢したがるため、財力に応じて何台ものオートバイを所有する人が増えている。それを見た庶民たちの間で「格差拡大」への不満が高まることを、当局は恐れているようだ。同時に都会にオートバイが多すぎて交通事故が絶えないという問題もある。

幹部の車両も没収の対象

一方で北朝鮮当局は幹部の業務用車両の没収も行っている。

平安北道の内部情報筋は次のように語っている。

「1月だけで大きな交通事故が全国で4件も起きた。平安北道のテチョンでは民間防衛訓練を終えて帰宅する人たちを乗せたトラックが崖の下に落ちて40人以上が亡くなったそうだ。そのせいか『交通秩序と海洋出入秩序を正すことについて』という人民保安部の指示文が下された」

その後、日曜休日は終日、平日は午後6時半から翌日午前8時半までの車両通行禁止時間に、規則を破って車を運転していた幹部の車が続々と没収されていると内部情報筋は伝えた。

この措置について脱北者はRFAに対して次のように語った。

「幹部たちの車両没収は、金正恩が彼らに指示を守らせ、手懐けていくための手段だ。しばらく経てば返してもらえるだろうが、その間は革命化に行かされる幹部もいるだろう」