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金正日は戦略的というより戦術的類型の人間だ。

目の前の難関を突破して利益を得る戦術と、短期勝負に非常に強い。94年のジュネーブ合意と最近の2.13北京合意は、金正日の戦術能力をよく見せてくれた事例だ。金正日は去年の11月のアメリカ共和党の中間選挙敗北−イラクの状況とイランの核問題の隙間をかいくぐって、アメリカとベルリンでの両者対話を成功させ、2.13北京合意を導き出した。

ブッシュ政権で国防省の副長官を勤めたアーミテージは、”金正日は弱い牌を握ってからも、最後まで利益を得る鋭利な人物”と評価したことがある。正しい言葉だ。金正日は鋭利で利害打算に明るく、ずる賢くて瞬発力がある。2005年の9.19共同声明後、不法金融問題が浮上すると、1年以上会談を拒否して核実験を強行して局面を変えた。

実は北朝鮮の核問題とBDAの不法金融問題は、互いに何の関係もない別個の事案だ。金正日は何の関係もない二つの事案を’アメリカは対北敵視政策をあきらめるように’と主張して、結果的に連結させることに成功した。

3月に入り、米朝関係の正常化で’速度戦’を行っている。北東アジアの情勢が変化し、今後、米朝、南北が絡みながら、再び’朝鮮半島の平和ショー’を見せてくれるようだ。金桂冠外務省次官は9日、帰国の前に中国に立ち寄り、”米朝間の懸案を解決して関係正常化をすることにし、BDA問題もアメリカがすべて解決してくれる”と強調した。現在の北東アジア情勢を見ると、米朝関係の正常化が最大イシューとして注目されている。

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この平和ムードがいつまで続くのかは、見当をつけにくい。ただ、短くても寧辺の核施設の閉鎖−HEUを含んだ核プログラムの錐吹E協議−核施設の不能化の期間までは、平和ムードが続くように思われる。そしてその間、5つのワーキンググループの議論の進展をはじめとし、韓国の対北支援、各種の南北会談と共同行事、南北首脳会談の推進などで、朝鮮半島の平和ムードはますます高まっていくだろう。 この雰囲気は状況によっては、12月の大統領選挙まで続く可能性がある。金正日が2.13という計算法に、韓国の大統領選挙も視野に入れているのは明らかだ。

金正日、戦略的決断を出せず

しかし、金正日は大きな枠組みの中で、国家と人民をどのように経営するかという戦略的な思考はしない。金正日が戦略的類型の人間なら、79年に中国が改革開放の大きな歩みに出た時、または90年代初めに東欧が体制転換をした時、北朝鮮も改革開放の戦略的設計をしたはずである。北朝鮮の背後には、いつも中国という心強い後援者がいたため、もし金正日が戦略的選択をしたら、中国から改革開放のあらゆるノウハウを伝授してもらうことができた。しかし、金正日はそうしなかった。

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今も同じだ。北朝鮮は改革開放の設計図を描いていない状態だ。北朝鮮国内の市場が拡がったのは、この10年以上、住民たちが自ら生存するために開拓したためだ。国家が改革開放の設計図によって箔ョ的、主動的に行ったのではなく、首領独裁政権の維持のレベルで先軍を強化し、統制体制を締めたり緩めたりして、現実に’適応’しているだけだ。

北朝鮮が中国、ベトナムのように、改革開放に乗り出そうとするならば、まず金正日の決断がなければならない。これは首領体制で必要条件であると同時に十分条件だ。もしこの決断を下すことができたら、あえてアメリカとの関係改善をせずに、中国を主なスポンサーにして、改革開放に乗り出すことができる。もちろん、アメリカとの関係改善は非常に重要だ。中国、ベトナムのように、北朝鮮がアメリカと全面的な外交関係を樹立することができれば、改革開放に出ることができる決定的条件が用意される。もし北朝鮮が核をあきらめてアメリカと修交して、改革開放に出ることさえできたら、これは大きく歓迎すことだ。しかし、金正日がそうした手順を踏むことができるかは疑問だ。

2.13以後急変する北東アジア情勢は、2000年と比べて類似した面もあるが、別の面もある。

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当時金正日は中国、韓国と首脳会談を持った後、その年の10月にチョ・ミョンロク軍総政治局長がアメリカを訪問し、オルブライト国務長官が訪朝して金正日に会った。またクリントン米大統領は、金大中大統領を通じて金正日がアメリカを訪問するように招請状も送ったという。クリントンの訪朝も予定されていた。しかし、金正日はクリントンの招請に応じなかった。クリントンの訪朝も実現しなかった。

当時、クリントンの訪朝の要請を金正日がどうして断ったのかは五里霧中だ。推論だが、金正日が訪米するということは米朝間の敵対関係の清算、アメリカとの修交交渉、朝鮮半島の平和体制の推進という意味があり、現実的にはアメリカが要求した大量殺傷武器の放棄を受け入れるという意味がある。しかし、当時としては適切なタイミングではないと金正日が判断した可能性がある。また、当時アメリカは大統領選挙の追いこみだった。金正日はさまざまな条件や状況が不十分だと判断した可能性がある。

しかし、より根本的な問題は、金正日がアメリカへ行く’行為の象徴性’を自ら受け入れることができなかったからであると見るのが妥当だろう。

金正日は今まで一度も自由陣営国家を訪問したことがない。アメリカや日本は勿論、ヨーロッパも訪問したことがない。父親に付いてインドネシアを訪問したと言及したことがあるが、主人公は金日成だったし、当時インドネシアはいわゆる’ブロック不加担’の主張を広げた核心国家だった。金日成の後継者になった後、30年以上金正日を訪問した国は中国とロシアしかない。このように見れば、金正日ほど守旧冷戦的思考を徹底的に守ってきた人も珍しいだろう。

金正日がアメリカを訪問するということは、自由陣営の本山と手を握るということを意味する。また、’これから私、 金正日は改革開放に乗り出す’という意味とも映る。これは首領独裁を維持している金正日としては’自分の存在の否定’にもなる。もちろん、金正日がアメリカを訪問しないとしても、米朝修交交渉は進行する可能性がある。しかし、いつかはアメリカの大統領と握手して、’友達’になる姿を見せる政治的行為が必要だ。しかし、2000年にこの’ファンタジー’(fantasy)は実現しなかった。金正日がクリントンの招請を拒否したのも、大量殺傷武器をあきらめて改革開放に出ることに対する恐れのためだ。

金正日が願う5つのもの

最近、米朝間の急速な雪解けムードを見つつ、金正日が核兵器を保有してもよいという条件で、すなわち核保有国が既成事実化された状況で、アメリカと修交しようとするのではないかという分析も出ている。2000年と2007年が決定的に異なる点は、2000年にはミサイル交渉が争点の核心だったが、北朝鮮は既に核実験国になったということだ。したがって、金正日が核保有国としてアメリカと修交すれば韓国は軍事、外交的孤立が不可避になるのではないかという憂慮だ。もちろんその可能性を完全に排除することはできないが、米朝修交は金正日が核兵器を完全に廃棄することくらい難しい。

アメリカとの修交は金正日としては本当にもぎ取って食べたい‘りんご’に間違いないだろう。もし首領体制を守ることができ、核兵器も保有し、在韓米軍の撤収と韓米軍事同盟まで破棄してアメリカと修交することができたら、金正日としては理想的なことだろう。しかし、それが現実として果して可能か。

北朝鮮の現代史の60年で’反米闘争’は政権の重要な存立基盤の一つだった。北朝鮮は’反米’で住民たちを洗脳させて、各種の群衆動員闘争を行い、その力を土台として政権を維持してきた。反米闘争は階級闘争−階級独裁−首領独裁の重要な手段であった。もし金正日がアメリカと修交したら、50年以上持続してきたこの国「が崩れるということだ。アメリカと修交すればそれに続く改革開放の波と、どんな形態であれ、首領体制の瓦解を、金正日は覚悟しなければならない。首領体制の解体は’金王朝’の終末を意味する。金王朝と北朝鮮の社会から離れて、果して想像が可能なのか。そしてなによりも今、金正日にとってはアメリカとの修交がより重要なのか、独裁政権の維持がより重要なのか。独裁政権の維持がより重要だというのは、当然であろう。

それならば、2.13以後の米朝間に見られる雪解けムードのこの’厳然とした現実’は何なのか。その答えを求めるのはそれほど困難ではないと思う。今、金正日に何が一番必要なのかを計算すればよい。

現在、金正日にとって切実なのはBDAをはじめとする国際社会の対北制裁の解除、ドル、食糧、エネルギー、韓国大統領選挙の局面を狙った朝鮮半島の平和ムードの醸成だ。金正日はこの問題を解決したいのだ。

金正日は米朝間の雪解けムードを利用して、1)国際社会の対北制裁を無力化して、2)’朝鮮半島の平和ムードの醸成’という対南政治宣伝戦を行い、3)韓国の各種の支援をたっぷりともらい−今年の韓国の対北支援はほとんど’借しまず与える乳牛’の水準になるだろう−、4)アメリカとの対話で日本を圧迫して植民地賠賞金議論を復活させ、5)中国の相変わらずの支援をもらい受けるのだ。

米朝関係正常化の対話は以上の5つを解決していく最初の掛けがねにあたり、また最も決定的な掛けがねになる。残りは概してこれに従属的なものだ。2.13合意文の国「も米朝関係の正常化など、5つのワーキンググループの稼動とBDAの解除がまず30日以内になっており、北朝鮮の核問題は60日以内となっていて、その後解決することになっている。 そのため、金正日はまずアメリカとの対話で速度戦を行い、大型の政治宣伝戦から始めようとしているのだ。

‘米朝関係正常化’ の情報, 北朝鮮の内部への逆攻勢が必要

では、’米朝修交’は。それはファンタジーだ。政治宣伝戦で、ファンタジーの醸成はいの一番にすべきことだ。大衆はこのファンタジーを眺めながら付いてくるようになる。 金正日にとって宣伝扇動は得意の分野だ。宣伝の大切さを誰よりもよく分かっている。金正日は米朝修交という’ファンタジー映画’をまず見せておいて、観客の目を引いている。観客は北東アジアの大衆だ。その中でも韓国の観客がこの映画にはまりやすい。そのため、韓国が鑑賞費用(対北支援)を一番多く出さなければならない。日本は歓迎も反対も難しいどっちつかずの姿勢で、米朝間の対話の結果によって押されて行く可能性が高まった。

ところがこの映画を見られない観客たちがいる。北朝鮮の住民だ。もし北朝鮮の住民がこの映画の鑑賞に加わるようになれば、不利になる人は誰だろう。それは金正日だ。北朝鮮の住民にとって’米朝修交’は衝撃的なことだ。既に外部の情報がある程度の水準で流入している状態で、’米朝修交’の消息は、住民たちの心理的動揺と改革開放の幻想をもたらす可能性がある。2.13合意後、北朝鮮の宣伝媒体が核施設の閉鎖を’臨時稼動中断’と発表したり、ニューヨークでの米朝対話を一切報道せず、また外国に出ている外交官の子供たちに全員帰国令を下したという消息は、北朝鮮の住民はこの’映画’を見てはいけないということを意味する。また金正日は”米朝間で対話が行われるが、改革開放の幻想を抱いてはいけない”という指示を内部で下したり、すぐに下逹する可能性が高い。

したがって、金正日としては所定の成果−各種の対北制裁解除、経済支援、朝鮮半島の平和体制の議論などの平和ムード造成−をおさめた後には、特定の国家に過ちを被せながら、この映画を終わらせなければならない。ややもすると長期のロードショーに突入し、米朝修交会談の進行が既成事実化すれば、住民からブーメランになって自分に帰って来る可能性があるからだ。

今、金正日が本当に米朝修交−改革開放に向かう戦略的決断を下したというどんな証拠もない。それなのに、米朝修交という一言に皆、興奮している。金正日の主な特技である短期戦術と宣伝が、今回も韓国の観客たちによく浸透しつつあるのだ。

こうした点から、金桂冠外務省次官が”ワシントン−平壌連絡事務所の設置を飛び越えて、ただちに修交交渉に入りたい”と言及したことについては、何度もじっくりと考えてみる必要があるようだ。 連絡事務所の設置は、正式な修交以前の段階だが、実際に修交に入る可能性がある物質的証拠になる。また連絡事務所だけ設置されても、平壌に星条旗が掲揚される。北朝鮮政府がこれさえできないようにするのは不可能だろう。平壌の星条旗は住民たちに衝撃と同時に、開放の幻想をもたらす可能性がある。同時に、米朝間の葛藤が生じても修交を控えた連絡事務所の段階で、大型の反米集会を持ったり、星条旗を燃やすこともできない。こうした点から、金副相の発言も’宣伝’の脈絡から理解しなければならないようだ。

したがって、’北朝鮮が核兵器を持ってアメリカと修交したら大変’という守勢的恐怖を今の段階で持つ必要はないだろう。むしろ今は、’米朝修交’と’北朝鮮の改革開放’という情報が最大限、北朝鮮の内部に入るようにする戦術的攻撃を敢行する必要がある。民間の対北放送は北朝鮮の住民を相手に、朝鮮中央放送ができない事実の報道を積極的に’代行’する必要がある。

事実、このような戦術的攻撃は民−官が体系的な役割分担の下で行うのが一番よい。問題は現政権がこれに対する意志も能力もないということだ。このため、これから今年一年間、金正日が放映した’米朝修交ファンタジー映画’の製作コストは、韓国が払い、むしろ金正日の政治宣伝に露出する可能性だけが高まった。

結局、この誤った国「を破ることができる担当者は国民だ。今年は必ずこの国「を壊す決定的なきっかけを作り出さなければならない。