24日に北朝鮮は、開城観光と南北間列車運行の中止、開城工団管理委員会の委員長を含めた職員の50%を今月末まで追放することを通告した。
また、南北将軍級の軍事会談で北朝鮮の団長は、「開城工業地区は金剛山観光地区の通行・通関のルールをより厳しくし、違反する人には強力な制裁を下す。これらの措置は1次的なものでその次は軍事的なものになる」と脅迫した。
この日の北朝鮮の行動パターンはこれまでの手法とまったく同じだ。
こうした北朝鮮の出方には2つの戦略的方向がある。
まず、李明博政権を手なずけ、10年間の南北関係に戻したがっている。次は、米国と協力するなということだ。「我々民族だけの協力」と言いながら、「アメリカの話を聞かず、こちらの話を聞け」という意味だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面更に深く見ると、4つの具体的な理由がある。
まず、来年まで北朝鮮の食糧事情がよい状態であるという意味が伺われる。
来年1月から市場を「10日市場」の形で強く統制したり、過去の農民市場に戻すという話が聞こえてくる。金正日の健康悪化説が浮上して以来、北朝鮮は最近、さらに住民統制に取り組んでいる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面次に、北京オリンピック以後、中朝関係が以前よりもよくなり、中国の支援を受けているという意味もある。
オリンピック開催前に、中国の習近平副主席が訪朝して金正日に会い、中国が相当な量の対北支援を約束したという話がある。金正日は中国の支援を確保し、アメリカとの接触をより増やす。そして、韓国は状況を把握し、自ら身を引くような戦術を使うと思われる。
さらに、韓国の葛藤を誘発する。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面対韓国強攻策を通じて、「韓国が対北強攻策を講じるから、これまで築いてきた南北関係が崩れてしまった」という世論を誘導しようとする策略だ。
最後に、金正日の健康状態がよくない中、むしろいつもより強い態度を見せる側面がある。
北朝鮮は24日付の通告文で開城工団の企業を相手に少し譲る姿勢も見せた。
通告文で「中小企業の大変な状況を考慮し、開城工業地区での活動を特例として保障することにする。韓国企業の常駐員のなかで経営に必要な関係者だけは軍事境界線の陸路遮断から除くことにする」と発表した。
これには、「李明博政権が我々の話に従えば、開城工団事業は続けられるようにする。工団に進出した企業の代表が李明博大統領を説得してほしい」という意図が含まれている。
では、どのように対応するべきか。
まず、こうした北朝鮮の行動は想定内だったため、韓国が揺さぶられる必要はない。普段通りにすればよい。
金正日は韓国政府が譲ってくれるまで圧迫し続けることを決めた。金正日は元々そういうスタイルだという。
22日に北朝鮮の祖国平和統一は、李明博大統領の「自由民主体制の統一が目標」という発言が出ると、まるで待っていたかのように「南北関係の断絶」を宣言した。北朝鮮が言うビラも結局そうしたレベルから出た小さな原因にすぎない。北朝鮮の対韓国戦略戦術の方向は、金剛山の観光客射殺事件が起きた時点から事実上決まっていたと見るべきだ。
したがって、相手の戦術が決まっている以上、我々がそこに巻き込まれる理由は全くない。「私たちはあなたたちがそういう風に出ると分かっていた。これからあなたたちがどういう出方をするのかも知っている」という態度をとったほうがいい。
韓国は、「韓国はいつも未来志向的で平和な南北関係を目指してきた。我々は南北関係の破綻を望んでいない。信頼や一貫性のある対話をする準備もできている」と、一貫性を持つ必要がある。
次は、すでに分かっていることだが、北朝鮮の軍事行動に備えることだ。
金正日が病床で統治している状況であるため可能性は低いが、北朝鮮が黄海の北方限界線で軍事行動を起こせば、それは対韓国戦術であると同時に、停戦状況のなかで戦争の相手国であるアメリカを意識した行為でもある。
金正日がアメリカのオバマ次期大統領の関心を自分に向ける行動をとるのであれば、来年の下半期ごろに一時的な黄海の軍事行動ではなく、より「強力で効果のある持続可能な行動」をとる可能性もある。
しかし、2005年9月にあったバンコ・デルタ・アジア銀行事件から始まり、2006年7月のミサイル乱射事件、そして10月の核実験、2007年の南北首脳会談など、李明博政権の発足以後、最近までの金正日の一連の行動パターンを見ると、過去よりせっかちで集中力が衰えているように見える。時々、後のことを考えず、行動に出ることも少なくない。「金正日の気分によって」挑発もあるかもしれないということも考慮すべきだ。
さらに、時間をかけても李明博政権は10年間の誤った対北政策を繰り返さないことを北朝鮮にはっきり認識させるべきだ。
金正日は金大中前大統領の「太陽政策」に対し、およそ2年以上の試験期間を持った。当時、労働党の文献にもあったが、金正日は金大中前大統領の太陽政策を「共和国を崩すような画策」と思い、東海(日本海)潜水艦事件、黄海の交戦、商船偽装船舶の済州海峡の通過など、様々な角度から試みたあと、やっと「太陽政策は安全」という結論に辿りつき、統一戦線部に太陽政策の逆利用政策を講じるように指示した。(統一戦線部出身のチャン・ジンソンさんの証言)
その結果、「北朝鮮が核実験をしても太陽政策のおかげで安全に暮らせる」(金大中元大統領)という「偉大な詭弁」まで出るようになった。そのため、李明博政権は北朝鮮が共存共栄政策の枠に入るように十分に時間をかけて待つほうがいい。
今の北朝鮮はいくらビリでも、金正日は「馬鹿」ではない。太陽の日差しで服を脱ぐような政権でもない。恥ずかしいことだが、 盧武鉉前大統領よりも、集中力が非常に落ちてきた金正日のほうが戦略・戦術が上手だ。
最後に、金正日が「共存共栄政策を受け入れたほうがいい」という判断を下すように条件を整えていくべきだ。
金正日は当分の間韓国を圧迫しながら、アメリカと中国に近付こうとするだろう。そのような行動は韓国にとって悪くはない。北朝鮮が主張していた、韓国を無視してアメリカと直接話し合う「通米封南」は、すでに現実性を喪失し、観念だけ金正日の頭に残っている状態だ。李明博政権がすべきことは、時間をかけてアメリカと中国と共に北朝鮮が非核・開放化の共存共栄の枠の中に入るように、国際的協力のために努めることだ。
今、北朝鮮が開城工団に向ってしきりにあらんかぎりの声を張り上げているのは、共存共栄政策に向かう一種の「成長期骨痛」ぐらいだと思ったほうがいい。