「こちらから心を開いて歩み寄ってこそ手を差し伸べてくれるのが人情ですよ」
昨年1月に大田(テジョン)都市公社の環境美化員(清掃作業員)の公開採用で合格した脱北者パク・スンミンさんをよく知る人は彼を「いい人」「何でも熱心な人」「信じて任せればちゃんとやってくれる人」などとベタボレだ。
昨年5月に中国人女性と結婚式を挙げた時には彼を知っていた脱北者、ボランティア、職場の同僚、昔の仲間たちまで訪ねてきて大賑わいとなった。
韓国に来る前に彼は中国のスニーカー工場で4年ほど働いた。今の妻もその時に見初めた人で、明るくしっかりした性格が魅力的だったと言う。韓国に来ても彼女のことが忘れられなかった。昨年、安定した職について正式にプロポーズしようと思い、大田民主平和統一諮問会議の助けを借りて招待し無事結婚にこぎつけた。
「北朝鮮の人は中国でまともに扱ってもらえない。それなのに私に勇気を与えてくれて成功を祈ってくれていた人です。子どもも作って幸せに暮らしたい」と語る朴さん。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面朴さんが大田にやって来たのは2012年5月のことだ。建築、解体など普通の人なら長く勤まらない肉体労働にも彼は真面目に取り組んだ。そのかいあって朴さんは、あちこちから引く手あまたになった。ある会社の社長は家が遠いから通勤に使えと車まで与えようとした。そこまでしても朴さんを引き止めたかったようだ。
「社長からは『熱心にしっかりと働いてくれた感謝の気持ちだ』と言われてありがたかったけど(次の仕事をしたかったので)必死で断りましたよ。」
「大田市の試験に合格したと言ったらすごく喜んでくれました。でも、やめなければならないので非常に残念がっていました。しんどい時はいつでも来いと言ってくれました」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ケチで有名な社長だったが誠実に働いたおかげでこっそりとボーナスをくれて給料も上げてくれた。その時、彼は「どんなことでも熱心に取り組んで信頼してもらわなければならない」と心に誓ったという。
「人、仕事、運は誠実さと努力で得られるものだと思います。諦めて人の施しを受けるつもりだったなら何一つ得られなかっただろう」
「いろんな人に助けてもらった、今度は私が助ける番」
朴さんは「自分は人に恵まれている」という。どこで何をしても助けてくれる人が現れる。大田ハナセンターのあるカウンセラーは語る。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「彼は常にポジティブで目標達成に向けて勤勉に働くし、人にも親切に接するからどこでも人気者ですよ」
「思いやりのある人です。ほぼ新品のようなものでも、それが必要な人がいればあげてしまうのです。いい仕事があれば脱北者に紹介してあげる。他人に対して親切なことばかりしている」
周りの評価を朴さんに伝えると照れくさそうに語った。
「本当にいろんな人から助けてもらいました。私は特別な何かを持っているわけじゃありません。目標を持って着実に働き困っている人がいたら助ける。皆そうやって生きるもんじゃないですか」
環境美化員(清掃作業員)として働きはじめた当初は、知人に見られるかもしれないと思ってマスクをしていた。マスクを外して堂々と働けるようになったのは2ヶ月ほど経ってからだ。早朝からの仕事は楽ではないが、毎月きちんと給与が入ってくる通帳を見て満足と自信を得る。
「環境美化員という職業を嫌がる人もいますが、社会に奉仕して給料をもらえる仕事はそうあるわけじゃありません」
「早く起きればその分仕事も早く終わります。何よりも心配なく長く続けられる仕事なので気に入っています。これまでいろんな人から助けてもらったので、今度は私が困っている人を助ける番です」
「もちろん今の仕事はきつくないわけじゃありません。忙しかったり気を使ったりすることも多いけど、前に比べたら幸せです」
「努力すればするほど一つずつ夢が実現していく」と満足気に語る朴さん。
昇進して資格も取って社会に貢献する人になりたいと語る朴さん。いつか統一したら北朝鮮の故郷に行って、自分がどのように道を切り拓いたかを誇らしく語りたいと言う。
「そのためにも過去を忘れずに生きて行きます。厳しい生活だったけど過去から得られる教訓が多いですからね。過去を振り返りつつ懸命に挑戦するつもりです。妻や私に心を開いてくれた人々のために、私を受け入れてくれた社会のために、いつの日かは統一されるこの国のために」