北朝鮮で自転車保有世帯が急増し、自転車に関連する事件や事故も頻繁に起きている。自転車に乗っている女性と彼女たちを取り締まる保安員たちのいざこざや自転車泥棒も増えている。
北朝鮮は1990年代半ばから女性たちの自転車乗りを禁じている。それ以来、地域別に少し異なるところはあるが、摘発されたら2〜3万ウォンの罰金が課される。
保安員は自転車に乗って移動する女性だけを取り締まる。自転車を持って行く場合は取り締まりはしない。そのため、女性たちは自転車に乗っていても近くに保安員が現れるとみんな自転車から降りて持って行く。
北朝鮮内部の消息筋は4日の電話インタビューで、「商売は女性しかできないので、市場の近くに行けば、自転車に荷物を積んで乗って行く女性が多い。女性がみんな自転車から降りて歩いていくことがあるが、その時は必ず保安員が近くにいる」と伝えた。
自転車に乗っている時に取り締まられると、荷物まで全部調査されるため争いも絶えない。3月中旬ごろにはスンチョン市の市場でとうもろこし5キロを買って帰る30代の女性教員が保安員の取締りで、荷物と自転車を全て奪われ、大同江で自殺した事件もあったという。
消息筋は「最近市場に行くと、自転車泥棒が増え、常に気をつけなければならない。物を買うちょっとした間に自転車が盗まれてしまう」と話した。
このように自転車泥棒が多い理由は、住民の生活に比べて自転車の値段がかなり高額のためだ。最近、自転車の値段が1〜2年前より2倍以上高騰した。日本製の自転車1台を手に入れれば最低8万ウォンは稼げる。8万ウォンは北朝鮮の中下階層の1ヶ月生活費に当たる。
盗んだ自転車はすぐ近くの市場で売るため、通報しても犯人を捕まえることはなかなか難しいという。自転車を盗まれた人たちは仕方なく他の人の自転車を盗むなど、悪循環が繰り返されているそうだ。
また、自転車を商売に使っている人たちが増えるにつれ、彼らを狙う強盗も増えたという。
夜になると、強盗が自転車に乗っている人を襲い、鈍器を振り回し、持ち物を強奪する事件が多いという。「明かりが少ない夜の街でだれが何を持っているのかわかりにくいので、無防備でやられてしまう」と消息筋が伝えた。
平安北道のある郡では今年の初めに、自転車強盗2人が公開裁判になったことまであった。夜、日本製の高級自転車に乗って帰宅する人を2人が襲い、鈍器を振り回し、自転車を奪った。しかし、強盗に遭った人が軍党委員会の幹部だった。
この事件で軍党委員会が大騒ぎになった。保安所は犯人を捕まるために近くの市場3ヶ所に保安員たちを自転車の買い手として潜伏させ、自転車の売り手をさらしだした。犯人たちは買手を装った保安員を家まで連れていって自転車を見せてしまい、捕まえられた。
自転車で生計を立てている貧しい商売人がこうした強盗にさらされると、食べていくこと自体が大変になる。一日稼いだ分がその日の生活費になり、次の日の商売の元手になるからだ。体まで傷つけられ、何日もの間仕事ができなくなれば、家計も苦しくなる。
このように強盗が増え、商人たちは夜移動する時はできるだけ3〜4人で一緒に移動する。一緒に行く人がいない場合は一日泊まって、次の日の昼間に移動するのが普通だという。
