北朝鮮で医師の数が不足しているという。米政府系ラジオRFAは9日、北朝鮮教育当局が医師の減少に歯止めをかけるため、医療系大学に増員を指示したと報道した。

北朝鮮は「無償医療」をスローガンとしているが、90年代の経済難「苦難の行軍」を通じて完全に崩壊した。薬は市場に横流しされ、医療器具は患者自身が自前で調達しなければならないなど劣悪な環境にある。
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RFAによると、北朝鮮の保健省が全国の医師数を調べたところ10年後には不足することがあきらかになったという。これに対処するために北朝鮮の教育省は、今年から大学医学部に50人規模の「特設クラス」を作るように指示したとのことだ。

悪化の一途を辿る北朝鮮医師事情

諸外国では社会的地位も収入も高い医師だが北朝鮮では事情が異なる。北朝鮮の医師は、個人の診療所を開業できず、全てが保健省傘下の病院に所属する。給料は3千〜5千ウォン(100円未満)レベルだ。また、日常の医療業務だけでなく「薬草掘り」と「農村支援」などあらゆる社会労働に動員される。

このような状況から医学部を卒業しても「医師」ではなく保衛部の幹部や党幹部の道を進む学生も増えているとRFAは伝えた。医療の道をあきらめて退職し市場で薬を売る道を選択する元医師も多い。

最近北朝鮮でも多い「整形手術」などは、現役医師がサイドビジネスで請け負ったりする。いわゆる「ヤミの整形手術」だ。手術を受ける場合、手術に必要な器具や材料は、受ける本人が市場で調達しなければならないケースもある。

デイリーNKジャパン取材チームは昨年6月、中国の延吉で元医師の女性(60代)にインタビューをしたことがある。彼女は平壌で医師を務めたが退職後、親戚訪問の名目で訪中し、不法労働していた。

「北朝鮮では医師を務めたからって老後は悠々自適じゃない。何もすることがない、つまり稼ぎがないからここ(中国)でホームキーパーをしながら平壌の息子に仕送りしている」

北朝鮮当局が、医師の増加を指示したとしても患者や医師を取り巻く劣悪な医療環境が改善されない限り、今後も医師が増えることは望めそうにない。