コメディ映画がホワイトハウスを揺るがした

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金正恩氏を題材にしたコメディ映画「ザ・インタビュー」の公開中止騒動が、ついにホワイトハウスまで巻き込んだ騒ぎとなった。

米国FBIは19日、「サイバー攻撃」を北朝鮮の犯行だと断定し、オバマ米大統領は「(ソニーの公開中止の判断は)結論が間違っている。どこかの国の独裁者が検閲を課すような状況を看過することはできない」とコメントしながら「相応の対応をとる」と警告した。

一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は、「米国が言い掛かりをつけた」と反論しながら次のように厳しく非難した。

「最高の尊厳(金正恩氏:編集部注)を冒とくしようとする不純分子らを絶対に放置しないが、報復する場合にも映画館の罪のない鑑賞者らを目標としたテロ攻撃ではなく、反共和国敵対行為に責任のある連中とその本拠地に対する正々堂々たる報復攻撃を加える」(20日朝鮮中央通信電子版)

IT事情に詳しい複数の専門家の話によると、現段階ではFBIの調査結果を鵜呑みにできないとのことだが、北朝鮮と韓国の間で、既にサイバー戦争は起こっている。(関連記事

韓国に仕掛けられた三度のサイバー攻撃

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ネット大国である韓国社会は、裏返せばそれだけネット依存度が高く、サイバー攻撃の格好のターゲットとなりやすい。

韓国は過去に三度、社会的な混乱が生じさせるサイバー攻撃を受けている。「7.7DDoS大乱(2007年)」「3.4DDoS攻撃(2011年)」「農協ハッキング事件(2011年)」がそれだ。

「DDoS攻撃」とは、大量の無意味なデータを送りつけるなどしてサーバーに負担をかけ、ダウンさせる攻撃である。

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2007年の「7.7DDoS大乱」では、韓国の政府サイトと銀行、ネットショップなどが攻撃を受け、アクセス不能や金融取引不能になった。社会的混乱を狙ったサイバー攻撃を受けるのは初のケースであり、韓国社会は衝撃に包まれた。

2011年の「3.4DDos攻撃」では、被害を最小限に食い止めたものの、直後に起きた「農協ハッキング事件」では、電算システムがダウンする障害が発生。窓口からATM、携帯電話サービスなど全ての取引が不可能になり、実社会的に甚大な被害を及ぼした。

「7.7DDoS大乱」と「3.4DDos攻撃」は「あまりにも初歩的過ぎる」との指摘があったため、当初は北朝鮮の犯行と断定するには慎重な意見もあった。しかし、農協ハッキング事件を調べた韓国政府は、いずれのサイバー攻撃も類似点が多いことから、北朝鮮による犯行としている。(関連記事

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今回のソニーへのハッキングが北朝鮮によるものという可能性がぬぐえないのは、こういった過去の事例があることと、北朝鮮がサイバー攻撃を起こす十分な能力を保有していると見られているからだ。

IT事情に詳しい専門家は語る。 「サイバー攻撃に最も重要なのはマンパワーだ。北朝鮮が、長年にわたってサイバー戦に力点を置いている理由として、大がかりな軍備を必要とせずに、相手に打撃を与えられるメリットがある。さらに、『我々がやったのではない』としらを切ることも可能だ」

ベールに包まれた「北朝鮮のサイバー戦士」たち。彼らが誰によっていかに育成されているのか次回は見てみたい。(つづく)

(文/デイリーNKジャパン編集長 高英起)

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記