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咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)で、現職の市の女性同盟委員長一家が首謀者であると指目された大規模な覚せい剤密輸組職が検挙されたと、北朝鮮の内部情報筋が伝えた。

会寧市の内部情報筋によると、2月20日に、咸鏡北道の国家安全保衛部(秘密警察)の要員20人余りがソ・ギョンヒ(49)朝鮮社会主義女性同盟会寧市委員長のアパート(会寧市産業洞42班)に対する家宅捜索を行い、覚せい剤15キロ、30万ドル、20万元を現場で押収した。

また、夫のK氏(前メボン会社社長)と娘のK氏は、麻薬組職の首謀者であると指目されて咸鏡北道の保衛部に拘束され、夫のK氏から覚せい剤を渡されて会寧市で中国との密貿易を主導してきた容疑で、前メボン会社の職員P氏とJ氏など、30人余りが咸鏡道の保衛部で取り調べを受けているという。

メボン会社は人民武力部傘下の外貨稼ぎ機関で、海産物、薬草などを輸出している。平壌に本社があり、 北朝鮮の主要な都市に支社がある。K氏が所属していた会社は明らかになっていない。

夫のK氏の運転手が道保衛部に告発

ソ委員長が覚せい剤の製造や販売に直接介入したという、関係者たちの証言が取れていないため、逮捕収監はされなかったが、2月21日に会寧市の党委員会が開催した群衆大会と、翌日開かれた「2006年会寧市女性同盟総和大会」を欠席するなど、公式的な対外活動を行っていない。

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今回の事件は、夫のK氏の自家用車の運転手として働いてきたL氏が、咸鏡道の保衛部に自ら出頭し、「ソ委員長の家族が覚せい剤を中国に密輸して、暴利を貪っている」と語ったことで明るみに出た。彼も現在、取り調べを受けている。

ソ・ギョンヒ女性同盟委員長は、会寧市の南門小学校少年団の指導員出身で、会寧市でも指折りの立志伝的な人物だ。北朝鮮で「女性同盟」は「社労青(金日成社会主義青年同盟)」と共に、朝鮮労働党を支える大組職だ。

ソ委員長は現在、会寧市の党の書記が主催する「市党執行委員会」の執行委員であり、市の人民委員会(市役所)の代議員も兼ねている。会寧出身の脱北者らは、「会寧市の女性同盟委員長ならば、会寧で5本の指の中に入る権力者」と説明する。

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首謀者として知られたソ委員長の夫K氏は、妻の後ろ盾で、地域の外貨稼ぎ企業である「メボン会社」の社長の座につくことができた。しかし、「各地域の外貨稼ぎの会社を一本化せよ」という党中央の指針に基づき、会寧では「牡丹会社」だけが生き残り、メボン会社は廃業したと伝えられている。

会寧市民も動揺

北朝鮮のすべての外貨稼ぎがそうであるように、K氏もメボン会社時代から、覚せい剤の密売に手を出したという。去年の会社の閉業後は、専属運転手だったL氏を運び屋、娘のK氏を会計担当として動員し、茂山、会寧、穏城など、国境地域の密輸業者に覚せい剤を卸すビジネスに乗り出した。

地元の情報筋によると、K氏とL氏の間では今年1月から諍いが耐えなかったという。K氏は清津で仕入れた覚せい剤を、会寧を拠点として国境地域の密輸商に麻薬を供給したり、中国の業者と密売を行ってきた。清津-会寧間の運搬は主にL氏が行ってきたが、その過程で担当してきたが、その途中でL氏が覚せい剤をくすねたとして、K氏が調査を行ってから、二人は不仲になったという。

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L氏は2月初めに、清津にある咸鏡南道保衛部を尋ねて、ソ委員長の家族の覚せい剤の取り引きの事実を語った。L氏がソ委員長一家の犯罪を告発した動機は明らかになっていない。L氏が会寧市ではなく、道の保衛部に行ったのは、地元ではソ委員長の莫大な権力で、もみ消されたり、自分の身に危害が及ぶと考えたものと思われる。

現在、会寧市ではこの事件に関するうわさが広まり、市民も随分動揺しているという。

会寧市の住民はソ委員長の家族が覚せい剤の密売を主導したという点と、家に巨額のドルや人民元を隠していたという点、普段ソ委員長が女性同盟組職の責任者として、脱北女性に対する処罰について強硬な発言をしてきたという幾つかの点を指摘し、「高位の幹部たちにも厳しい処罰を」と口をそろえて言っているという。

100グラム1万人民元前後で取り引き

ソ委員長と同じ町内に住んでいる北朝鮮の住民、パク・ジョンシム(仮名)氏は「今、会寧ではソ委員長の家族の話でもちきりだ」「道保衛部が乗り出したため、今回はきちんと法の権威が作用すると言う人もいるが、いくら道保衛部でも、あのように金も多くて権勢のある人が、法律で処罰されるのかと疑問を持つ人もいる」と述べた。

今年1月に中国に脱北した会寧の住民、カン・ウンスン(仮名)氏は、「ソ委員長が普段まくし立てていたことを思うとあまりにも悔しい」と語った。ソ委員長は普段から口癖のように「会寧の女性たちはともすると中国に逃げて、自分の身を汚すだけでなく、金正淑氏(金正日氏の母)の故郷の名誉も汚している」と、脱北女性に対する強硬な処罰を主張してきたという。

またソ委員長は、女性同盟組職の政治講演や不法越境者の公開裁判の席で「地元で違法行為が蔓延しているのは、女性たちが家族の面倒をきちんと見ていないからだ」「お金に目がくらみ、いい加減に身を転がす浅はかな人間」などと言っていた。カンさんは「もし麻薬の取り引きと係わった罪がないという判決が出ても、自分が言った言葉のために、女性同盟委員長の地位を維持することはできないだろう」と述べた。

北朝鮮製の覚せい剤は、中国をはじめ、韓国、日本、マカオでも売られている。脱北者によると、覚せい剤の最大の生産者は北朝鮮の興南(フンナム)製薬工場と目されており、小規模工場で覚せい剤の製造を行う人々もいると知られている。

現在、中朝国境地域で密売されている覚せい剤の卸売り価格は、品質によって商品は100グラム当たり12000人民元ほどであり、品質が中くらいの品は9000〜1万元、質が低いものは7000元ほどだ。

2004年の4月に改定された北朝鮮の刑法218条には、「麻薬を密輸、密売した者は5年以下の労働教化刑に処する。このような行為に数回共謀したり、大量の麻薬を密輸、密売した場合、5年以上10年以下の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合、10年以上の労働教化刑または無期労働教化刑に処する」と明記されている。