「金正日三周忌」を目前に控えた北朝鮮では、反帝国主義、反米教育が強化されているが、学生は1ドル札をラッキーアイテムとして制服のポケットに入れている。それほど思想が揺らいでいるのだ。

反米教育の効果なし

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は次のように説明する。

「金正恩は信川(シンチョン)博物館(朝鮮戦争時に米軍による民間人虐殺の発生したところ)を訪問した。工場、企業所はもちろん高校でも思想教育の基本は反米教育だ」

ところが、反帝、反米教育を受けている学生がラッキーアイテムとして1ドル札を制服のポケットに入れているという。

「彼らは1ドル札をポケットだけでなく教科書にも挟んでいる。そして、お札に描かれたジョージ・ワシントンの話をする」

「アメリカの首都ワシントンは街の名前ではなくアメリカ初代大統領の名前だという話をしている」

北朝鮮メディアは、金正日の三周忌を迎える12月に入って階級教養に力を入れている。特に、国連で北朝鮮人権決議案が採択された件に敏感に反応して「魚は水なしでは生きていけないように、反帝反米教養、階級的教育なしでは人々の自主的生活と人間の尊厳の価値について考えることができない、革命の勝敗、社会主義の勝敗は反帝、反米教養、階級的教育をいかに行うかにかかっている」と宣伝している。

また、先月金正恩が現地指導した反米教養施設である信川博物館では、韓国で2002年に米軍の装甲車にひかれてなくなった女子中学生のヒョスンとミソンの写真を展示するようになった。そして、学生たちに「狼の本性は変わらないように米帝に対して幻想を持つと死につながる」と教育している。

このような反米プロパガンダでも住民と学生のドル好きは変えられそうにない。

金正恩も米ドル札に込められた親心には勝てず

学生たちが100ドル札よりも1ドル札のラッキーアイテムと思っていることについて次のように説明する。

「ドルがあれば行きたい大学に行けると考えている若い世代がアメリカへの幻想を持つのは致し方ない」

「1ドル札は世界最強のアメリカを建国した初代大統領の肖像が描かれている紙幣で、『1』という数字が順調に進めるという意味で考えられているため」

「学生たちの間で2番めに人気のあるのはリンカーンの肖像画が描かれている5ドル札」

「リンカーンは両親を失ってまともな教育すら受けられなかったが、奴隷解放を成し遂げた歴史上の人物なので学生たちが理想としている」

「子を持つ親たちは未来を切り拓いて大きな人間になりなさいという思いを込めて1ドル札や5ドル札を子供たちに与えている」

「当局の反米教育は変わらないだろうが、いくら教育しても学生たちの米ドルに対する幻想は捨てさせるのは難しいだろう」

一方、内部情報筋によると、北朝鮮では数年前まで1ドル札や中国の1元札は中々目にできないものだった。しかし、米ドルや人民元が北朝鮮で広く使われるようになっている。今や、豆腐1丁を買うにも外貨を使うほどだ。

市場で北朝鮮ウォンを使おうとすると「田舎者」と笑われるほど外貨が使われる頻度は絶対的に高い。これは、北朝鮮ウォンの価値下落や人々の外貨への依存度が高まっていることを意味する。

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