拉致事件は「発生」から「解決の入り口」にたどり着くまで、実に40年以上もかかったことになるが、まだ解決はしていない。現在、進められている日朝交渉も必ず紆余曲折があるだろう。
解決に向けて、まずは実行した北朝鮮側がどれだけ日本人拉致の真相を明らかにするのかにかかっている。逆に言えば、日本側がどれだけ北朝鮮側から真相を引き出せるか。真相究明できず、中途半端な幕引きでは、日本の世論も納得しない。
拉致問題は、実行した北朝鮮に最も責任があることは言うまでもない。一方、ある程度、事件の概要を把握しながらもその時々の政治的判断により事実を明らかに出来ず、また明らかになってからも十分な対北外交が出来なかった、もしくは積極的に取り組んだにもかかわらず結果を出せなかった歴代政権にも反省すべき点はなかったのか。
同じ轍を踏まないためにも、今一度振り返る必要がある。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。