金正日の指令によって日本人拉致が頻繁に行われていたのは、1970年代から1980年代だ。事件発生から発覚(2002年)まで30年以上かかっていることになるが、2000年頃まで、拉致疑惑に切り込もうとするマス・メディアやジャーナリストはごく一部だった。また、世間一般では「真偽不明の怪しい事件」、または「都市伝説」のごとく語られていた。
北朝鮮の工作員が、海岸から極秘に侵入し、誰にも悟られずに一般市民を北朝鮮へ拉致。また、その市民になりすましてスパイ網を構築するーーまるで、スパイ映画や小説に出てくるような話は、あまりにもリアリティに欠けていたことから、戦後の平和になれきった日本社会において、にわかに信じがたい話だった。
一方、単発的ではあるものの、一部ではかなり早い段階で日本人拉致疑惑は報道されていた。
朝日新聞が詳細を報道
1985年6月28日付けの朝日新聞(夕刊)は、以下のように伝えている。