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北朝鮮が11月初旬に行われる衆議院選挙後の次期日本政府とは拉致被害者問題を、次期米国政府とは核問題を交渉する個別の2国間交渉に踏み出すという専門家の意見が出た。日本人拉致問題を核問題のてこにするという。
日本の北朝鮮専門家である関西大学の李英和経済学部教授は29日、デイリーNKとのインタビューで、金正日政権の先行きを予想した。

[李英和教授とのインタビュー全文]

- これから日本政府の対北朝鮮政策はどうなると思うか。

自民党の麻生総理が首相になったが、来月末や11月初旬の衆議院総選挙で自民党が惨敗する可能性が高い。民主党が政権を握り、生まれたばかりの麻生政権は短命に終わると思う。

目下のところ麻生内閣に様々な外交政策はあるものの、今すぐ選挙を準備しなければならない状況なので実質的な外交活動は不可能だ。

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民主党の対北朝鮮政策が重要だが、自民党より問題が多い。民主党の北朝鮮政策にはなんの原則もない。どういう政策を講じるのか予測するのも難しい。これから政権を握った後、きちんとした外交政策を講じることができるのか心配だ。

民主党内にも日本人拉致被害者問題と関係のある議員が少なくないし、北朝鮮の人権に関心のある議員もいるが、民主党も選挙に全力をあげなければならない状況だ。小沢民主党代表は必要ないとして民主党内の国際局を撤廃した人物だ。

国際局とは、政権を握った後、日本の外交を担当するべきところだが、国際局がなくなった状態で次期民主党政権がどのような人物を外務大臣にするのか全く予想がつかない。

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- 民主党政権が誕生すると、日朝関係はどうなるのか。

予測しがたい。民主党は今絶対的に人が足りない。しかし、民主党が政権に就いたとしても拉致被害者問題は無視できない。それは日本の国民の関心が高いためだ。これから民主党も拉致被害者問題を解決しなければならない立場になるが、北朝鮮の核問題や日朝国交正常化問題にきちんとした意見を持っている人物が1人もいない。

民主党は対北関係でまだ「党論」というものがない。民主党が日・米・韓の同盟関係を放棄はしないが、一定の距離を置く可能性もある。

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これまでの民主党の態度を見ると、米国のイラク戦争に反対し、テロとの戦いにも距離を置いてきた。そのため米国との摩擦が生じるかもしれない。

- 自民党の対北政策を評価するならば。

自民党の対北政策は失敗だ。自民党は米国に頼りすぎた。核問題については米国と協調する必要があるが、拉致問題については米国とは別に北朝鮮と直接話し合う必要がある。

また、日本の北朝鮮への経済制裁も米国や韓国を一緒にすれば、効果があったかもしれないが、日本だけが行っても効果が期待できない。
拉致問題も日本国民は小泉首相以来一人も連れ帰れなかったことについて責任を問うだろう。

- 民主党政権になれば、拉致被害者問題も解決する可能性があるのか。

民主党の努力も大事だが、拉致被害者問題の解決のカギは北朝鮮が握っている。民主党は自民党と違いを強調するために拉致問題に全力をつくすだろう。

日本国民が持っている拉致被害者に対する関心を考えると、民主党は1人の拉致被害者でも連れてこられるのであれば、自民党より優位を占めるチャンスになると思う。

北朝鮮も自分たちに対して強硬政策を講じてきた自民党を牽制するためにも、民主党政権に対して前向きな姿勢を取る可能性がある。北朝鮮は日本の対北経済制裁の緩和と対北支援を望むだろう。

北朝鮮との国交正常化問題は日本としてはメリットが1つもない。日本としては国交正常化より拉致被害者問題が大事だ。国交正常化はこれまで日本に不利な点だったが、拉致被害者問題と核問題で日本が対北戦略で利用できる1つのカードになった。

- これからの6カ国協議はどうなると思うか。

6カ国協議はすでに終わったと思う。このようになった理由はいろいろ挙げられるが、これまで表に出ていなかった原因のひとつはロシアだ。ロシアが完全に手を引いた。この間、開かれた北京での6カ国協議にも参加しなかった。

6カ国協議はイランの核問題とリンクしているのにロシアが手を引いたのは、グルジア紛争などの国際問題と関連し、米国と協力し合わないという姿勢を徹底しているためだ。

ロシアが6カ国協議の枠から去り、北朝鮮を応援する立場になる。北朝鮮は核問題と関連しては米国と2国間協議を望んできたが、米国はそれを避けるために効率の悪い6カ国協議を作ったが成果はあまりなかった。

韓国政府がどう思うかはわからないが、北朝鮮はこれから米朝協議で核問題を解決するという立場を崩さない。また、北朝鮮としてはそうした方法が最もメリットがあると思われる。核問題は米国との2国間交渉を選び、別ルートで日本とは拉致被害者問題の2者会談を開く。

北朝鮮が考えている米朝、日朝会談は性質が違う。北朝鮮は米朝間の核問題の交渉がうまくいかない場合、日朝間の交渉を解決しようとする態度で局面転換を試みるだろう。そのために2つの両者交渉を同時に行う可能性が高い。

- 金正日の健康問題と後継問題について。

つい最近、日・米・韓の情報機関関係者の会合があったと聞いた。それぞれ持っている北朝鮮の情報を話し合う場だったが、北朝鮮の情報は韓国が最も多く持っていたと聞いた。日本は正式な情報機関がないので、情報提供ができなかったという。

私の考えでは、金正日は10月10日の労働党創立記念日にも公の場には出ない。健康状態が悪いと言っても死に瀕している状態でもないし、意識が全くないというわけでもない。どのくらい判断能力があるのかは知らないが、最小限の意思表明はできると聞いた。

問題は、金正日が権力代行者や後継者を決めることができるのかということだが、現在北朝鮮には公式的には金総書記の代わりにできる人物がいない。これは金総書記以外に誰も決められない問題だ。

こういう状況が終わると、張成沢が公式に権力を代行し、後継者は金正男になる可能性が高い。金正日の健康状態がよくなかった今年の2月〜8月まで6ヶ月間張成沢が密かに中国を訪問し、中国の指導部と数回にわたって面談したという。

おそらく金正日の健康状態が悪いことを前提に、今後の北朝鮮について話し合ったと思う。

昨年、中国が張成沢を中国に呼んで、北朝鮮が改革開放を進めるのであれば、10年間北朝鮮経済のインフラコストを支援するという話をしたと聞いた。中国がそういう支援条件を出したのは、北朝鮮の経済改革開放の責任者として張成沢を、重要部署に金正男を置くという意味だったという。

張成沢が北朝鮮に帰ってこういう内容を金総書記に報告したが、金総書記は「そうした条件つきの話をただ聞いてきただけか!」と怒ったという。

後継問題を国の問題ではなく金一族の問題だと考える金正日としては、中国が勝手に干渉することについて怒りを覚え、張成沢にも同様にとても怒ったそうだ。

中国は張成沢−金正男ラインを支持している。中国の支持を受けている 張成沢−金正男がこれからメインになる可能性が高い。

張成沢−金正男ラインに対して北朝鮮内部でどのぐらいの反発があるのかはわからないが、中国の支持を受けていない軍部はその影響力が非常に弱いというのは確かだ。