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1987年11月、民間人115人が乗った旅客機KAL858便を爆破した後、逮捕された女性スパイ金賢姫。彼女は逮捕された時、自殺を試みた。毒薬が入ったタバコのフィルターを噛んだのだった。だが、周囲にいた警察官たちによって直ちに病院に移送され、胃が洗浄されて自殺に失敗した。

病院のベッドに縛られたまま死の眠りから覚めた直後、彼女を襲ったのは生命に対する強い呪いと、死ねなかった絶望感、そして自殺に成功した工作員キム・スギルに対する羨望だった。

“いかなる手段と方法を使ってでも死ななければならない”

当時彼女はこう決心した。心が迷い乱れた状況でも、ひたすら死ななければならないという一念で、夢を見ているかのように自殺の方法を探していた。看護婦のはさみを奪えば自殺できるとも考えたが、彼女の身体は固く縛られており、身動きはできなかった。時間が経ち、酸素呼吸器と口の中に入れられた胃の洗浄用ホースが除去された瞬間、彼女は舌を噛んだ。死を決意して噛み、赤い血が流れて激しい苦痛が襲ったが、舌は切断されなかった。実際に舌が切れたとしても、警察と医療陣が待機している病院で多量の血を流して命を失う可能性は初めからなかった。結局、自殺は未遂に終わり、ソウルに移送された。

死ぬための彼女の壮絶な身悶えは、彼女が高度に訓練された工作員という事実と一緒に、いわゆる’党と首領に対する忠誠心’、北にいる家族に対する愛がそれだけ深かったという事実を証明している。

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そのような彼女が北朝鮮に対する愛情と未練をきれいさっぱり捨てたきっかけがある。KAL機事件が国際社会に伝わった直後、北朝鮮政府が‘KAL機事件は南朝鮮によるでっちあげ’と言い批判したのだった。

当時、金賢姫が北朝鮮の工作員という証拠として提示された写真があった。幼い金賢姫が、南北赤十字会談の韓国側代表チャン・ギヨン氏に花束を手渡す写真だった。北朝鮮政府は‘その写真の主人公は金賢姫ではなく自分’と主張する、チョン・ヒャ唐ニいう女性の会見のビデオテープを朝鮮総連を通じて日本のメディアに配布した。その画面は韓国でもテレビで放送された。

“これは私だ。(私が)代浮スちが来た時、花束を手渡した当事者なのに、(南朝鮮で)これは’真由美’(金賢姫)と言っています。私は今平壌に住んでいるのに、それでは私が真由美だというのですか。わきまえというものがあるでしょう。私は堪えられません。本当に、これをきちんと解き明かさなくては堪えることができません・・・・・・ 新聞を見ながら旅客機事件はすべてでっちあげと言うことは認識しました。けれども直接私に被せるので、南朝鮮の傀儡たちが今まで騷いでいたのは、100パーセントすべて嘘だな、すべて捏造だな、すべてでっちあげだなとよく分かりました。私はこの場で南朝鮮の傀儡の卑劣な行動に対して、憎しみをこめた声で断固として糾弾します”

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テレビのニュースで、チョン・ヒャ唐ニいう女性の主張を見た金賢姫は胸が張り裂けそうな怒りを感じた。‘私をにせ物の北朝鮮の人間だと責め立てるなんて、どうしてこんなことがあるのだろうか’忠誠心に溢れていた彼女の裏切られたという気持ちも強かった。自分の生命と生活を捧げてきた党から捨てられた心情はいかばかりであったのか。彼女は回顧録で、‘南朝鮮の特務’たちの前で頭を上げることができないほど、悲惨でやつれていたと告白している。

金賢姫が裏切りに苦しんでいた時、平壌ではKAL機爆破事件は韓国情報部の卑劣な自作劇という糾弾大会が連日開かれていた。金賢姫が通った大学の日本語科の教授たちも糾弾大会に動員された。

脱北者の証言によれば、1983年に韓国の大統領を狙った北朝鮮によるミャンマーのアウンサンテロ事件の後も、北朝鮮政府は全国規模の南朝鮮糾弾大会を開いたという。ミャンマーのアウンサンテロは南朝鮮傀儡政府の自作劇ということを天下に宣布して、一日も早く南朝鮮から米帝を追い出して、戦争を通じて統一を果たそうというスローガンで全国が搖らいだという。

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3日に北朝鮮の祖国平和統一委員会(祖平統)の代弁人が、女性スパイウォン・ジョンファ事件は“謀略劇”と主張した。“以前も南朝鮮で数多くの‘スパイ事件’がでっちあげられて物議をかもしたが、今回のように稚拙な‘スパイ事件’が捏造されるのは初めて”と前置きし、韓国政府に対して“保守勢力を結束して進歩勢力を弾圧し、南北関係悪化の責任を回避して、同族対決政策を追求するためだったが、下心がある”と批判した。

金正日政権は手の平で太陽を分かつというようなどうしようもない嘘を今回も見せてくれた。こうした嘘を信じる人は誰もいない。だが、どうするのか。金正日は世の中で最も偉大で人間的な指導者だと思っている一部の北朝鮮の住民と、極少数の韓国の親金正日主義者たちの離脱を阻むためには、自分で考えてもきまり悪く照れくさい行動をせずにはいられないのだ。