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ブッシュ政府がますますひどくなる北朝鮮の脅威を阻むために行った仕事はあまりない。金正日政権と先週妥協したと得意になった核交渉を見ただけでも、現在としては全く信じられない交渉の相手から、紙を一枚もらったこと以外には特に目に付くものはない。

にもかかわらず、ブッシュ大統領のチームはおかしいことに、本当にすばらしい機会を無視し続けている。 北朝鮮の住民の数万人に自由をもたらし、北朝鮮を内から根本的に改革するように圧迫を加えて、朝鮮半島の平和統一の基礎を固める機会があるにもかかわらず、そっぽを向き続けている。中国に隠れて暮らす脱北難民を救援する組職を援助すれば、アメリカは全てのことを明日にでも成し遂げられる。

他のことなどはさておき、人道的立場から見ただけでも、鴨緑江の国境地帯の近くに身を潜める哀れな北朝鮮の住民たちを助けることが、絶対的に急がれることである。難民の数字がいくらなのかは正確に知られていないが、この難民たちの危機はアフリカのスーダンのダルフール地域の人種虐殺に劣らない悲劇だ。国際危機グループは中国に潜伏する脱北難民の数字は数千人だというが、最近漏洩した中国の官吏の文書によると、その数字は数叙恊lに達するという。

北京政権は越境した北朝鮮の難民たちを不法入国者として取り締まり、経済的移住民、またはそれよりもっと悪く扱ってきたが、この難民たちは毎日恐怖の中で死ぬこともできずに暮らしており、常に逮捕の危険の中で生きている。女性達は性の奴隷に転落したり強制結婚させられ、逃れてきた男や子供たちは、役にたたないと放り出されて死んだ人々が女性よりも多いと言われている。

しかし、中国でこのような搾取にあい、暴力と犯罪の犠牲になる北朝鮮の難民も、北朝鮮に強制送還される難民よりはましだという。中国が国連難民条約に加入したにもかかわらず、脱北難民を探し出して北朝鮮に強制送還するのに、北朝鮮は金正日の ‘楽園’を捨てて逃げる人々を反逆者として扱うため、強制送還された難民たちには監獄と拷問が待っており、甚だしくは処刑されるという。にもかかわらず中国は彼らが難民ではないと、冗談を言っている。

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このように中国政府が(去る10余年間)脱北難民に対して悪どい扱いをしてきた中、人権活動家たちは危険を冒して難民を救援し、第3国に脱出するように勇ましく助けている。 ニューヨークのスティーブ・キム(キム・スンファン: 2003年に中国の監獄に収監)、シアトルのフィリップ・バック牧師(ユン・ヨハン牧師: 2005-06年、15ヶ月間中国の監獄に投獄)、エイドリアン・ホン(12月に中国から強制追放)やアメリカや韓国、そしてその他の外国の勇ましい人権活動家たちだ。

彼らは脱北難民を中朝国境地帯から東南アジアの国まで、険しい 6千マイルを経て、難民を受け入れてくれるという第3国に行くように導く。

これだけ切迫した状況の難民を利用してお金を儲ける人々も現れた。北朝鮮からあふれ出る難民を助ける人々の努力を、それぞれ他の理由でけなそうとする中国政府と韓国政府は、この現代版’人肉商売’を売り渡してきた。崇高な動機から、あるいはお金を儲けるという目的からでも、難民が逃げ出して自由を求める道は既に存在している。もし北朝鮮の住民が外国で公式的に北朝鮮の難民を保護してくれると信じれば、もっと多くの人々が逃げてくるだろう。

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この難民救援組職の最大の障害物は言うまでもなく中国だ。韓国政府は北朝鮮の金正日の機嫌を損ねることを怖れてたじたじとなり、国連難民高等弁務官事務所は北京政府を怖れているから、中国政府ははばかりなく脱北難民を弾圧してきた。アメリカだけがこの北京政権の意地をくじくことができる程度だ。

もしワシントン政府が難民を助けると積極的に出れば、中国政府は難民に関する損益計算を再び検討し、彼らの政策を全面的に変えるかも知れない。もし米政府が(他国の政府と共に)中国に対し、脱北難民は中国を経由するだけであって、別の国に行くはずだ。あなたたちがこの難民を永遠に保護して養わなくてもよいと、非公式的に確実な言葉を与えれば、北京政府も態度を変えて、この難民たちの移住と定着に協力するかも知れない(中国政府が協助しないとしても最小限見逃してくれるだけでよい)。

中国政府がこのようにしさえすれば、 中国が恐れている多くの問題は自然に解決されるだろう。例えば、国連難民機関や国際機関が難民たちを迅速に他の国に移住させれば、中国は国境付近にいる多くの不法難民のために発生する危険を、これ以上心配せずにすむ。

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米政府がこのように先頭に立てば、韓国政府や国連機関は脱北難民の危機をこれ以上無視することができないだろう。スーダンのダルフール地域の人種虐殺に乗り出した政府や国際機関も、脱北難民の救出運動に音頭を取ることができるだろう。国際社会がこのように立ち上がれば、ソウル政権もこれ以上しらんぷりをすることはできないだろう。韓国政権が金正日に対しては身動きができないが、韓国憲法によればこの難民たちは全て大韓民国の国民だからだ。

脱北難民を人道的に救出すれば、これはアメリカの安保にも実質的に役に立つ。北朝鮮から難民があふれ出れば、金正日政権の脳天を殴るのと同じ効果があるだろう。脱北難民は金正日の独裁が嘘に基づいているという実証になるからだ。金正日の権威とアイデンティティは地に落ちるはずで、これほどの事態がおこれば金正日が生まれて初めて自国民の要求に耳を傾けることもありうるだろう。脱北難民を救援する組職は朝鮮半島全体の完全な自由に向けた第一歩で、この世で最も重要なことだ。

脱北難民に自由をもたらすことは、アメリカの戦略的利得にも大きく貢献するはずであり、この間この政府が騷々しく騷いだ自由拡散政策にも目にみえる効果をもたらすだろう。アメリカが、そしてどんなアメリカ大統領でも、このような業績を果たしたら、後世、歴史で大きな点数を稼ぐこともできるだろう。

<ニューヨークタイムズ 2月19日の論説>


ニコラス・エバシュタット(米北朝鮮人権委員会理事)/クリストファー・グリフィン(米企業研究所研究員)

翻訳/ナム・シヌ(在米北朝鮮人権活動家)