アメリカのランド研究所をはじめとし、韓国の国防大学安保問題研究所、ポスコ経営研究所、中国の改革フォーラム(チャイナリフォーム)、日本の世界平和研究所、ロシアの現代韓国学研究所など、韓・米・日・中・露の北朝鮮研究者が共同研究した、‘北朝鮮体制の近代化’(Modernizing the North Korean System. Objectives, Method and Application: 北朝鮮体制の近代化: 目的, 方法, 適用)’という報告書が出た。
これまで5ヶ国の6つの研究所が、2005年6月から’北朝鮮の近代化’という主題で、ソウルや東京、北京、モスクワなどで協同研究を行ってきた。当初、北朝鮮にも共同研究を提案し、セミナーの開催前に毎回招待状を送ったが、結局一回も参加しなかったという。
報告書は現在、アメリカのランド研究所のホームページに掲載されている。
この5ヶ国プロジェクトには、国防大のハン・ヨンソプ教授とキム・ヨンス教授などが参加した。プロジェクトに参加したキム・ヨンス教授と6日に会い、‘北朝鮮の近代化’という報告書について、具体的な説明を聞いた。
- ‘北朝鮮の近代化’という概念はどのように出てきたのか?
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面近代化は国連のメンバー国のうち、GDPの上位70ヶ国が共有している共通の特徴だ。変化に対する熱望、市場経済体制の志向、経済の開放、外国との交流の拡大、合理性の追求、教育制度、市民社会の形成、政治の多元化などがこれに含まれる。普通の発展した国で見ることができる共通の特徴を北朝鮮が追求しなければならない。
現在、北朝鮮は政治的には閉鎖的な一人支配体制で、経済的には自給自足の形態を帯びており、軍事的には過剰軍事優位である前近代的特徴が見られる。したがって、‘北朝鮮の近代化論’は、北朝鮮の前近代性を近代に移すことが基本的な主旨である。開放、市場化、多元化が北朝鮮の近代化のキーワードと言える。
方法論的には、北朝鮮の前近代的特徴を識別して、こうした特徴を乗り越えるための政策上の手段を講ずることを目標にしている。今回の作業の目的は、北朝鮮がこのプロジェクトの結果を見て、自分たちがよい暮らしをするためには何をしなければならないのか、アイディアを探してみなさいということである。近代化のための方案を自ら探ることができるようにしようということだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面当初は、北朝鮮の正常化(Normalization)と近代化という概念を一緒に使っていたが、これに対して中国が意義を垂オ立てた。それでは北朝鮮は今、正常ではないのかという反駁だった。中国だけでなく、近代化という表現の方が北朝鮮が受け入れ易そうだという側面から、‘近代化’に整理するようになった”
- ‘北朝鮮体制の近代化’について、2005年から5ヶ国が共同で研究してきた。あわせて何回セミナーが開かれたか?
“第1回ワークショップは2005年6月にランド研究所で開かれ、第2回ワークショップは2005年10月にモスクワで開かれた。このワークショップでは、北朝鮮の近代化は世界の政治や経済体制に北朝鮮を正常な一員として編入させることを目標にするものであるという点で意見が一致した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、北朝鮮の変化の熱望を刺激させることが出発点ということと、北朝鮮を変化させるためにはインセンティブだけでなく、それに反する措置もなければならないという問題意識も共有した。
第3回ワークショップは2006年5月に北京で開かれたが、この時から私たちの研究所も参加した。そこでは、北朝鮮の近代化のための各研究所の立場を述べるなど、具体的な議論が行われた。この時、北朝鮮の正常化という用語に対して中国が強くアピールして、‘近代化’という言葉が定められた。
同年11月に東京で開かれたワークショップでは、3回目の会議を中心に大体の運営計画が作られた。北朝鮮の近代化システムに対して各国がコメントする形式で進められた。2007年4月にはソウルで最後のワークショップが開かれた。この時は、ランド研究所が北朝鮮体制の近代化に対する報告書を発表して各国がコメントをした。
報告書が1年後に出たのは、アメリカで様々な対北戦略の変化が発生したからだと思う”
- 北朝鮮問題の解決方法をめぐって、各国の意見が大きく異なっていたと思うが
“全体的には、6カ国協議の雰囲気に似ていた。中国は北朝鮮を擁護する立場で、経済的インセンティブに焦点を合わせている。北朝鮮も今、それなりに努力をしているから、圧力をかけてはならないという立場だった。ロシアも経済問題に集中して、これに関するアイディアをたくさん提示した。
一方、アメリカと日本は安保の側面をより重視した。特に日本は、北朝鮮は現存する安保の脅威と言い、強硬な態度を見せた。6カ国協議が必ず成功してこそ、日朝関係も正常化できるというものだった。北朝鮮の核実験以後は、より断固とした態度が見られた。
韓国は実際に、政治や経済、安保、社会文化の領域で北朝鮮と交流をしている。問題はこの10年間、この4つの手段のうち、経済的な部門だけにあまりに集中したということだった。この窮極的な結果が核実験として現われたと思う。北朝鮮が核実験を決行する意志を韓国が提供しなかったか、反省する部分だと考える”
- 今回のプロジェクトには、6カ国協議の参加国のうち、北朝鮮を除いた5ヶ国が参加した。北朝鮮の非核化の達成以後、6カ国協議を北東アジアの多者安保機関に発展させようという国zとも関連があるようだが
“6カ国協議には、北朝鮮体制の未来に対する目標がない。核問題の解決という優先目標があるに過ぎない。6カ国協議の進行過程で、朝鮮半島の非核化を前提にした5つの分科委が設置されて、北朝鮮問題に対する包括的なロードマップを提示しているが、大きな絵があるだけで過程が抜けているという問題が残されている。
だが、私たちの目標は北朝鮮の核問題を越えて、安保の脅威を発生させる体制の内的熟成の問題を解決しようということである。
現在、核問題が最大の話題になっているが、核問題が解決されたとしても、北朝鮮問題はそのまま残る。北朝鮮の最大の問題は、国家に能力がないということだ。北朝鮮の脅威は体制の前近代的特性に端を発している。長期的な計画で北朝鮮体制のシステムを変化しようというのが今回のプロジェクトの目的だ”
-‘北朝鮮体制の近代化’は、長期的で包括的な北朝鮮の変化のロードマップと思われる。李明博政府の‘非核、開放、3000’が実用的接近を前面に出しているため、大きな枠組みでの対北政策としては不足している部分があるという指摘をどう思うか?
“実用的な対北政策の目標は、北朝鮮の改革開放の拡大、市場の経済体制の転換、南北朝鮮の軍備の統制、南北関係の制度化に整理することができる。これを推進する原則は、まず国民の合意がなければならず、国際協力にならなければいけないということだ。また政治、経済、安保、社会文化の領域の有機的な国「化が成り立たなければならず、行動対行動の原則が守られなければならない。
北朝鮮の協力を引き出すためには、インセンティブだけでなくディスインセンティブ(Disincentive)も使わなければならない。待つ政策もその1つだろう。現在、北朝鮮は対米関係、直接の軍事行動、韓国国内の世論の悪化という3重の圧力をかけ、南北関係で北朝鮮が主導権を握ろうとしている。だが、私たちが願っている変化の速度と幅を導き出すためには、待つ政策も甘受しなければならない。
‘北朝鮮の近代化’において、最終的には韓国の役割が最も重要だと思われる。この時、周辺国が参加する費用の問題の解決や、国民の支持の獲得などのために、政治の力が発揮されることが必要だ。私たちがこの部分でリーダーシップを発揮するためには、高度の戦略と統合的な外交力が必要だ”
- ‘北朝鮮の近代化論’と‘北朝鮮のレジームチェンジ(Regime change 体制転換)’はどのような相互関係があるのか?
“近代化の過程で、自然に‘レジームチェンジ’ができる。しかし、私たちの目標は北朝鮮の政権交代ではない。今回のプロジェクトは、体制やリーダーシップの変化よりは、より広範囲にわたり根本的に北朝鮮体制を近代化させるために必要な代案の模索に関心を集中させた。また、‘政権交代’あるいは‘リーダーシップの交代’という用語は、本来の意図から注意を分散させる可能性があるため使っていない。
むしろ北朝鮮は、近代化を推進することで政権の伝統性を高めることができるだろう。現在の体制の閉鎖的な特性と前近代性自体が、北朝鮮政権を脅かしている。前近代性を露出させれば、両者が脅威になる可能性があるが、前近代性の改良の過程を露出させることを通じて、政権の伝統性を強化する結果を生む可能性もある”
- 北朝鮮の近代化のためのプロジェクトに中国が参加したということにも、大きな意味があると思われるが
“今回のセミナーで、北朝鮮の現状維持が中国の政策的目標ではないということが分かった。中国は、北朝鮮が自分たちのやり方で改革開放の道に向かうことを目標にしている。
中国が近代化プロジェクトに参加することは、北朝鮮に対する間接的な勧告のメッセージになると思われる。北京で開かれた会議は北朝鮮もモニターしただろう。中国は北朝鮮に直接、‘改革開放しなさい’、‘南側と関係改善をしなさい’などという表現は使わないが、体制の近代化が、北朝鮮が選ばなければならない道だというメッセージを間接的に投げかけている”
- 北朝鮮の急変事態に対する議論もあったか?
“ワークショップでは扱われなかったが、実質的な議論をしなければならないと思う。体制の変換の過程で政治変動の可能性が拡大する可能性があるからだ。1990年代半ば以後の15年間、北朝鮮は能力がない政権ということが底まで現れた。どうにかこうにか(体制を)延命させながら、安保の脅威でかろうじて堪えるか、原則的な体制の近代化を誘導するか考えれば、答えは明らかだと思う。
北朝鮮は失敗した国家だ。これからは、金正日は殴り殺すべき奴だという話は必要ない。北朝鮮の再建計画や国家の建設について議論する段階に入ったと考える”