クックのIH圧力炊飯ジャー、クック電子提供
クックのIH圧力炊飯ジャー、クック電子提供

炊飯器1台で家1軒、トウモロコシ2トン

80年代の韓国では日本製の象印の炊飯器が富の象徴だった。日本に行くとなればいろんな人から象印の炊飯器の炊飯器を買ってきてくれと言われたものだ。何を勘違いしたのか「象印のビデオデッキが欲しい」と頼む人すらいた。

一方で今の北朝鮮では韓国製の圧力炊飯ジャーが富の象徴となっている。

両江道(リャンガンド)の内部情報筋は次のように伝える。

「韓国で『クック』は人気商品か。こちらの市場では売れに売れている」

「金持ちは『クック』のどの種類を使うかで、その家の豊かさが決まる」

「中国製は40万ウォンから70万ウォンだが、韓国製は80万ウォンから120万ウォン。『クック』1台で農村の家1軒、トウモロコシ2トンが買えるほど」

「クック」とは韓国のクック電子が製造している炊飯ジャーのブランドだが、北朝鮮では韓国製でも中国製でも圧力炊飯ジャーなら何でも「クック」と呼ぶとのこと。

内部情報筋はその理由を説明する。

「中国の朝鮮族が圧力炊飯ジャーを『クック』と呼んでいるのが広がった」

「北朝鮮の人々は炊飯ジャーから勢い良く蒸気が『クック―!』と出るから『クック』と中国人が名づけたと思っている」

クック電子のマーケティング担当者はそれを否定する。「クック」とは料理するという意味の英語「cook」と正確な時間を知らせる「カッコウ(cuckoo)」を合わせたものだとのことだ。ちなみに日本では鳩時計と呼ばれるが、英語ではcuckoo clock、カッコウ時計と呼ばれている。

炊飯器が買えない庶民のやるせなさ

内部情報筋は北朝鮮でのクック人気を次のように伝える。

「庶民にとって『クック』は夢のまた夢だが、金持ちや幹部の家にはあって当たり前。金持ちの嫁入り道具と言えば『クック』だ」

「保衛指導員や党幹部が親戚を訪ねて中国に行く人に『渡江証(出国ビザ)を出してやるからクックを買ってきてくれ』と頼むことも多い」

「韓国製品はご禁制の品なのに、市場で『韓国製のクックはあるか』と露骨に聞いて回る人もいる」

「韓国製のクックを使っているか中国製のクックを使っているかが富の基準。庶民の私はやるせなくなる」