2月25日に第17代李明博大統領が就任しました。’デイリーNK’は李明博政府の出帆を迎え、対北.外交.安保政策と関連し、専門家たちの提言を掲載する’新政府に望む’を企画しました。この10年間、左派政権が顔を背けてきた北朝鮮の人権問題を含め、拉致被害者・国軍捕虜問題など、対北政策と外交・安保政策に対する専門家の多様な意見をご紹介する予定です。読者の皆様の多くのご声援を願います。/編集者 註
李明博選挙対策委員会の委員長を勤めたユ・ジョンハ元外務省長官が2月13日、李明博大統領が国軍捕虜と拉致被害者問題を対北支援と連携させるという国zを持っていると紹介した。同時に、国軍捕虜と拉致被害者問題を担当する組職を統一部の中に設置する方案が検討されていると22日報道された。
戦時・戦後拉致被害者及び国軍捕虜の送還を北朝鮮に対する物質的補償と連携させて推進するという国zは、ドイツのフライカウフ(Freikauf)の先例を参照にしたものだ。フライカウフは’自由を買う(purchase of freedom)’という意味で、西ドイツ政府が民間のチャンネルを活用して、東ドイツの政治犯と離散家族を連れてくるために、東ドイツ政府と行った秘密交渉のことである。.
西ドイツは1963年からベルリンの壁が崩れた1989年まで、’フライカウフ’によって34億4千万ドイツマルクに相当する現金または物資を東ドイツに提供し、33,755人の政治犯を西ドイツに連れてくることができた。
私たちはドイツのフライカウフの事例から2つの重要な教訓を学ぶことができる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面第1は送還の交渉にドイツ政府が乗り出さず、民間団体が行うようにしたということだ。交渉を担当した主体は’仕える’という意味の名がついたキリスト教系の社会福祉団体ディアコニー(Diakonie)だった。西ドイツ政府が直接交渉に乗り出さなかった理由は、東ドイツの犯罪行為に西ドイツ政府が補償するという道徳的非難を浴びる可能性を憂慮したからだ。
2番目に、送還の対価は現金の支援よりも現物支援の形で送った。1963年に西ドイツのアデナウアー総理が東ドイツから政治犯を8人連れて来るために、現金32万マルクを支払ったのが唯一の現金送金の事例であり、以後西ドイツは物資を提供するという方法を取った。現金を支援すれば政権が直ちに流用する可能性があるという憂慮のためだった。
私たちは拉致被害者と国軍捕虜の送還交渉でも、西ドイツのフライカウフが見せてくれた2つの教訓を肝に銘ずる必要がある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面まず、対北交渉は政府が直接乗り出すよりも民間が主導して、政府は財政支援だけするのが望ましい。’北朝鮮人権財団’ のような民間機関を設立して任せた方がよいだろう。韓国政府が直接乗り出して現金や現物を提供し、拉致被害者や国軍捕虜を連れて来ようとしたら、タリバンと交渉してアフガンの人質を連れ出して来た時のように、犯罪行為に対して政府が直接償うという国際社会の批判を受ける可能性がある。したがって、政府よりは民間が主体になって交渉することが政治や道徳的負担がより少ない。
拉致被害者と国軍捕虜の送還の対価として、現金の支援よりは現物支援の方向に舵を取った方がよいだろう。そしてそのやり方も経済協力分野に対する支援よりは、食糧や肥料、医薬品などの人道主義的な分野に物資を送った方がよい。南北経協は市場の原理に従って進められなければならない。
フライカウフの教訓ではないとしても、対北政策の軟着陸のために、政府ではない民間が交渉を主導するのが有利だ。北朝鮮は日本との拉致被害者交渉で荒々しい向かい風に当たった。北朝鮮の立場では、日本との関係を改善しようとしたものだったが、日本の国民の世論の悪化のために、日朝外交が更に梗塞する結果となった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面これは日本の立場でも必ずしも有利な状況の展開ではなかった。もし日本でも民間が乗り出して拉致被害者の送還の交渉を行っていたら、日本政府は拉致被害者問題で一歩譲り、北朝鮮との他の交渉チャンネルを維持することができたはずだ。日本政府は悪化した世論のために、すべての対北交渉で日本人の拉致被害者問題を最優先課題に設定するしかなく、結果的に6カ国協議の進展の過程でむしろ米朝の間で孤立することにもなった。
北朝鮮は韓国政府と拉致被害者、国軍捕虜の交渉をする際に、まったく同じ心配をする可能性がある。最悪の場合、拉致被害者や国軍捕虜の交渉問題のために、その他のすべての南北交渉が停滞または中断するというシナリオが出るかも知れない。
したがって、拉致被害者や国軍捕虜の交渉問題は、既存の南北経協と離散家族の再会、人道的支援交渉などの枠組みとは異なり、民間トラックで進行することが南北関係の軟着陸のために望ましいと思われる。
もちろん、拉致被害者と国軍捕虜の送還問題に韓国政府が乗り出しても民間が乗り出しても、北朝鮮は素直に相手をしてくれないだろう。だが、現在の朝鮮半島情勢を総合的に判断すると、今は政府よりも民間が主導して交渉に出ることが、もう少し賢明な政策の代案になると思われる。