人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

開城観光の重要な特徴は、時間とお金を浪費しない商品ということだ。もちろん、日帰り観光だから18万ウォンは決して安い値段ではない。だが、金剛山観光と比べると市場性があるようだ。金剛山に行くには40-50万ウォンのお金、そして3-4日程度の時間が必要だから、行こうとする人はあまり多くないようだ。だが、開城観光は18万ウォン出せば、簡単に1日で行って来れるため、行きたいと思う首都圏の人は多いだろう。現在の規模は毎月1万人程度だから、今後拡大する可能性もある。

筆者の考えでは、社会的影響がほとんどない金剛山観光と違い、開城観光は以北にも以南にも、南北の住民の意識に深刻な影響を及ぼす潜在力がある。

韓国の人々が自分の目で直接北朝鮮の状態を見られたら、北朝鮮に対する意識が変化する可能性がある。極少数の専門家を除いて、最近まで韓国の人たちは、北朝鮮の生活ぶりを出版や映像のイメージなどの2次資料を通じて知った。彼らがこの資料を信じないこともあるが、たとえ信じても、直接見ることはできない。筆者が理解できる数ヶ国語の中に、百聞而不如一見(百回聞くよりも一回見た方がよい)の意味に似ている諺がない国はない。それだけ、’百聞而不如一見’はすべての国の人間心理の基本原則の1つとなっている。

韓国の人たちは開城観光を通じて、北朝鮮の経済の後進性を直接感じることができるが、その後は対北政策に対してそれぞれ完全に他の立場から見ることもできるだろう。ある人たちは対北支援をより積極的に支持するだろうし、ある人たちはこのような貧困をもたらした北朝鮮の政治体制に対して敵対感を感じ、ある人たちはこのように遅れた国との統一に反対するだろう。けれども、開城に行って見た人たちの中からは、北朝鮮に対する無関心はある程度消えるだろう。

また、開城観光は北朝鮮という国が、韓国とどれだけ近いのか体験する機会を与える。午前6時にソウルの江北から出発する訪問者たちは、2時間ほどかかる出入国手続きにもかかわらず、午前10時にはパギョン滝に到着するから、開城がピョンテクよりも近いということを感じる。こうした印象もとても重要だ。韓国の多くの人は北朝鮮と何の関係もなく、地理的に近いにもかかわらず、精神的には以北を遠い国のように思うきらいがあるが、この地理的な現実を悟れば、北朝鮮問題の深刻性をより容易に理解することができるだろう。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

南北の住民、未来と統一を考えさせる所

だが、開城観光の影響は韓国だけでなく、北朝鮮の人もたくさん受けるだろう。

当局者の努力にもかかわらず、大規模な観光は開城の住民に打撃を与える可能性がある。毎日のように、市内では見られなかった10台の大型バスに乗って来る韓国人を遠くからでもこっそり見るようになれば、北朝鮮政府の御用宣伝に疑問が生ずるしかないからだ。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

韓国のバスと自動車の姿、訪問者の身なり、しぐさなどを見れば、韓国の勤労大衆は本当にアメリカ帝国主義と南朝鮮傀儡徒党の暴圧の下で苦労しているのかという疑問が起こるのは自然なことだ。特に、韓国の訪問者たちは北朝鮮の労働者の平均月給の1/4にあたる1ドルで(市場では1ドルが労働者の平均月給に該当:編集者注)コーヒーを1杯買い、お菓子をいくつか買うことを全く負担に思わないといううわさが立つしかないだろう。

‘南朝鮮の人々’が民俗旅館で食べる11種類のおかずが出るご馳走も、以北では道の党級以上の幹部たちだけが食べることができるものだが、この事実もすぐにうわさの種になるだろう。もちろん、北朝鮮の宣伝当局が“その人たちの多くが傀儡徒党と協力している金持ちや資本家、地主の奴等なのでお金が多い”と主張する可能性はある。しかし、毎日開城の町中を繰り返し回る大型バスを見る開城の市民たちにとっては、歳月がたつほど、こうした主張の説得力が弱まるだろう。

韓国の訪問者と直接近付いて話を交わすことができる北朝鮮の人も、少なくとも数百人はいると推定される。もちろん、彼らはすべて保衛員かそうでなければ保衛部で厳格な検査を受けて配置された人々だ。だが、保衛員と言っても、ロボットのように何の考えもない存在と見てはいけない。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

実はソ連の歴史から分かるように、1980年代に開放、改革を支持した幹部の中には、北朝鮮の国家保衛部に似たKGBの特務機関出身者が少なくなかった。彼らは外国の事情をよく知っていたから、ソ連体制の危機の深刻性を他の幹部よりもよく理解していた。元々北朝鮮の保衛部にも、韓国についてよく知っている人はあまり多くなかった。今、その数はかなり増えたが、こうした事実は長期的に少なくない意味を持つ可能性がある。また、その人たちには家族もいて友達もいる。彼らは言葉に非常に気を付けてはいるが、それでも酒の席でいくらか話す人もいるだろう。

開城で南側は北側の貧困を、北側は南側の豊かさを垣間見る機会がある。この機会のおかげで、北朝鮮でも韓国でも、多くの人が両国の未来について、また統一に向かう道について考えるようになるだろう。

韓国では、開城観光事業は北朝鮮の体制維持のための方法だと批判する声も一部で聞かれる。もちろん、この批判には根拠がある。訪問者ごとに100ドルずつ北朝鮮の予算に寄付することは事実だ。北朝鮮の支配層はこのお金を稼ぐことができるから、開城観光に承諾した。

だが、北朝鮮体制の生存の条件は人民の無知と孤立だ。開城観光は北朝鮮の住民に、外部の世界の事実を暗示するため、彼らの意識に影響を与えている。したがって、長期的に見れば開城観光事業は体制維持よりも体制の弱化、改革と開放、あるいは革命をもたらす要素と考えることができる。

最近まで、北朝鮮に海外の情報が流入する主な経路は中国との国境だけだったが、最近では開城工団や開城観光のため、こうした情報が非武装地帯に少しずつ漏れ始めたようだ。