この数年間、北朝鮮の人権問題は世界的な問題になってきた。しかし、昨年10月の北朝鮮の核実験以後、北朝鮮の人権問題は後回しにされた感がある。
核実験の4ヶ月前には、ブッシュ大統領が脱北者と直接面談するなど、北朝鮮の人権問題に特別な関心を見せた。しかし、今アメリカ政府は北朝鮮の核の解決に集中している。北朝鮮の人権問題は核心問題からはずされていくのだろうか。
ナム・シヌ氏は在米の北朝鮮人権活動家として広く知られた人物だ。今は北朝鮮自由連帯の共同副会長を引き受けている。彼は元々建築家だった。今も建築会社の代表である彼は、北朝鮮の住民の悽惨な暮らしを知った後、猛烈な北朝鮮人権活動家になった。
最近訪韓したナム氏は、“北朝鮮が核実験をしなかったら、北朝鮮人権法の執行など、アメリカが積極的な姿を見せただろう”と言い、“しかし今はアメリカが北の核問題に集中せざるおえない状況になってしまった”と語った。
ナム氏はアメリカの上・下院議員たちに手紙と請願書を送るなど、2004年にアメリカ議会を通過した北朝鮮人権法の下書きの作成と法の制定に主導的に参加した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ナム氏は“私たちが根本的に解決しなければならない問題は、相変らず北朝鮮の人権”と語った。“海外の同胞たちとアメリカ人たちに、北朝鮮の人権問題をこの先も知らせて行くつもり”と言い、“アメリカの政治家たちと連帯して国務省が動くように圧迫を加える”と話した。
彼は“最近、民主党の議員たちの間で、北朝鮮の人権を取り上げるのは共和党とブッシュを助けることになると思う雰囲気が生ずるなど、北朝鮮の人権問題に政略的に近付こうとする傾向がある”と述べ、“悲しい現実だが、民主党議員を対象にし、北朝鮮の人権の実態を積極的に知らせるつもりだ”と計画を明らかにした。
彼の持論は“普遍的な人権問題が核問題に属してはいけない”というものだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ナム氏は2000年からアメリカ全域を回って、北朝鮮の人権問題を知らせてきた。2003年には北朝鮮人権団体であるディフェンス・フォーラム(代父Xザンナ・ショルテ)など50以上のNGOによって構成された’北朝鮮自由連帯’を結成した。北朝鮮自由連帯は2004年から毎年、脱北者と北朝鮮の人権の専門家を招待して、‘北朝鮮自由週間’という行事を開催してきた。
‘北朝鮮自由週間’には、アメリカの政治家たちが大挙して参加した。この行事を通じて脱北者が議会で北朝鮮の人権の実態を証言するなど、アメリカ国内で、北朝鮮の人権の最大の行事として評価されている。
特にこの行事の‘金正日大虐殺写真展’が、アメリカ人によく知られている。この写真展は2004年に入って、海外同胞とアメリカ人たちの熱い関心を集めた。
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[次はインタビューの全文]
- 北朝鮮自由連帯はどのような団体か
北朝鮮自由連帯は北朝鮮の人権問題の深刻性を感じて、これを解決しようとする人々が集まった団体だ。北朝鮮自由連帯は‘金正日大虐殺写真展’、‘北朝鮮自由週間’などを通じて、海外の同胞とアメリカ市民に北朝鮮の人権の現実を知らせている。
北朝鮮自由連帯は2004年に‘北朝鮮人権法’が制定されるように力をつくしてきており、今はこの法律が一日も早く執行されるように活動している。私を含めて、スザンナ・ショルテ、ディフェンス・フォーラム代表は、‘北朝鮮人権法’の下書きの作成から制定に至るまで、この法の必要性について、アメリカ上・下院議員たちに手紙と請願を出した。
また、レフコウィツ北朝鮮人権特使に、北朝鮮の人権問題解決のための具体的な実践方案を提示して、アメリカ政府が行動に出ることを促す活動をしている。
-‘金正日大虐殺写真展’と‘北朝鮮自由週間’に対するアメリカ人の反応はどのようなものか
彼らは初め、北朝鮮の人権に関する写真や映像を見て、到底信じられないと話した。まだ北朝鮮の人権の実態がまともに知られていなかったという意味だ。悽惨な写真や映像を見た人々は、“ありえない事”と言いながら泣きもする
。特に、韓国人教会の教会員たちは多くの関心を持ち、支援をしてくれる。アメリカ人たちも今では多くの関心を持っている。これからより熱心にしなければならないという気がする。
- 北朝鮮の核実験のため、人権問題が後回しにされた感がある
ブッシュ大統領が北朝鮮の人権問題の深刻性をつくづくと感じていることは事実だ。レフコウィツ北朝鮮人権特使を任命したことも大きな成果だ。しかし、北朝鮮が核実験をしたため、関心事が人権から核に移った。このため、‘北朝鮮人権法’による予算の執行が遅くなり、人権特使の活動もごくわずかだ。
今アメリカは、6カ国協議で北朝鮮の人権問題を持ち出すのが、核問題の解決の障害物になると判断している。私たちはこうした問題に対して、ライス国務長官とレフコウィツ特使に請願を出して、問題提議をしたが、明らかな変化を導き出すことはできなかった。それでも引き続きアメリカ政府が積極的に出ることを促そうと思っている。
- アメリカの態度の変化はどのような理由のためか
ブッシュ大統領はイラク戦争のために支持率が下落するなど、頭を抱えている。そのため、北朝鮮問題に気を回すことができない。それに北朝鮮が核実験をして、核問題は到底無視できない問題になった。このため、北朝鮮の人権問題が後回しにされたようだ。
一方で、北朝鮮の人権問題に関心が高かった政治家たちが退却し、変化をもたらした。北朝鮮の人権問題に声をあげた行政府、議会の主要な政治家たちが退却した。チェイニー副大統領が残っているが、イラクと北朝鮮の核問題がある中、北朝鮮の人権問題に雰囲気を転換するのは難しいことだ。
- 民主党が上・下院を掌握したが、民主党の議員は北朝鮮の人権問題をどのように見ているか
‘北朝鮮人権法’は民主党を含めたすべての議員が満場一致で制定された。アメリカの政治家は人権問題の原則的な面では譲歩しない。しかし、雰囲気が変わった側面がある。
今、民主党の議員に北朝鮮の人権問題に関し、援助を要請しても、あまり助けてくれない。理由は北朝鮮の人権問題について話せば、共和党を助けることになり、ブッシュ大統領を助けることになると思うのだ。つまり、普遍的な人権問題に政略的に近付く。切ない現実だ。
- アメリカで北朝鮮の人権改善活動をするようになったきっかけは
かつて、個人的にリンカーンが好きで、リンカーン関連の本をハングルに翻訳した。この時、リンカーンが人権を最も大事に思うということが分かるようになり、私も人権に目覚めるようになった。こうした変化を経験しながら、北朝鮮の同胞の人権問題に接するようになった。ご存知のように、北朝鮮の人権問題は到底言葉にできないほど、深刻だ。こうした深刻性を感じて、2000年から北朝鮮の人権改善活動を始めた。
また2001年に、ファン・ジャンヨプ先生が書いた『闇の側の日差しは闇を照らすことができない』という本を読んで、より深刻に考えるようになった。 金正日の蛮行と奴隷のような生活をする住民の状況が分かるようになり、この道を邁進するようになった。
- 韓国は北朝鮮の人権問題をどのように扱っていると思うか
韓国で人権団体と脱北者が熱心に活動しているが、北朝鮮の人権問題が国民の主な関心事になったとは思えない。アメリカで活動して、同胞が活動に乗りださないのを見て、あまりにも胸が痛かった。
北朝鮮の人権をはじめとし、今の北朝鮮問題を賢く解決することができなければ、私たちに未来がないという点を、韓国の国民がよく理解しなければならない。特に、韓国政府は腕をこまねいて傍観しているが、これは大きな歴史的過ちである事実を、一日も早く悟ってほしい。
- 今年の‘北朝鮮自由週間’の計画は
今年は特別な行事を準備している。アメリカの北朝鮮専門家と、脱北者を招待して、北朝鮮の政権崩壊後について、深い討論を行う予定。すなわち、北朝鮮政権の崩壊が韓国と中国に悪影響を及ぼすのではなく、北朝鮮の民主化と改革開放を導いて、北朝鮮の人権が実現するという点を議論するだろう。
また‘金正日大虐殺写真展’を通じて、アメリカの市民に北朝鮮の人権の実態を引き続き知らせて、中国政府に脱北者の強制送還の禁止を促す集会を開催しようと思う。これから‘私たちだけでも死に物狂いで北朝鮮の人権の現実を知らせよう’という決意の下で、活動をする予定。