▲5月16日に開催された「第9回全国芸術人大会参加者のための牡丹峰楽団祝賀公演」で愛国歌が斉唱され、起立している金正恩夫妻。左端に金正恩の妹、金与正の姿も見える。/写真=朝鮮中央TVキャプチャー

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮の公式行事で愛国歌が登場したことが後日確認された。5月24日、朝鮮中央TVが放映した「第9回全国芸術人大会参加者のための牡丹峰楽団祝賀公演」で愛国歌が登場。北朝鮮がスポーツの国際試合以外の国内の公式行事で愛国歌を斉唱したのは今回が初めて。

同日実施された祝賀公演の最初のプログラムで牡丹峰楽団が4重奏で愛国歌を歌った。愛国歌が斉唱される間、後方スクリーンには大型の北朝鮮国旗が映し出され、出席した金正恩夫妻をはじめ、観覧者全員が起立した。愛国歌斉唱が終わると再び着席した。

北朝鮮の愛国歌は金日成の指示により1947年6月に作られた。越北詩人のパク・セヨン作詞、鉱山労働者出身のキム・ウォンギュン作曲で2番まである。

北朝鮮はこれまで、国家の政治行事はもちろん各種祝賀公演で「金日成将軍の歌」、「金正日将軍の歌」、「足跡」など金正恩一家を称賛する歌を歌って来た。よって今回のように祝賀公演の舞台で最初に金正恩に対する忠誠の歌ではなく、愛国歌が登場した背景には、昨年の張成沢粛清による内部の混乱を収拾し、対外的にまともな国のイメージを演出するための意図があると解釈できる。

国家安保戦略研究所のイ・スソク主席研究委員はデイリーNKに「公式行事で愛国歌を歌いまともな国をアピールしようとした。金正日時代とは変化を試みている。今後も国家行事の正常化するために愛国歌が登場するだろう」と展望した。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

世界北朝鮮研究センターのアン・チャニル所長は「金正恩体制が牡丹峰楽団が体制を宣伝する扇動隊、別働隊としての役割を果たせるよう、積極的に目立たせているように見える。祝賀公演で愛国家を斉唱したことも『愛国で金正恩を奉れ』というメッセージを伝えようとしている」と分析した。

一方、同日放映された牡丹峰楽団公演では、愛国家に続き「愛に対する想い」(ラ・ユミ)、軽音楽「馬のひづめの音」、「海の晩風歌」(キム・ソルミ)、「将軍様の考え」(ラ・ユミ) や歌演劇「私は永遠にそなたの息子」「追憶の歌」「天の盾、我々がなろう」「私の心臓の声」(ラ・ユミ)、女性重奏「戦線行き列車」など、金正恩一家を称賛し忠誠を強調する内容の歌が登場した。

公演終了後、牡丹峰楽団の俳優全員が舞台から降り、公演を観覧していた金正恩夫妻と一人一人握手をするなど、以前はなかった光景が見られた。