人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮は1960?70年代に金日成の権力独占と金正日の後継告}を確立。「党の唯一思想10大原則」を通し、最高指導者の権威を維持してきた。同大原則は北朝鮮の法体系を超越する効力を持つ。皮肉なことに北朝鮮憲法には、最高指導者冒涜に関する規定は無い。最高指導者の冒涜は10大原則の適用だけで即時処刑や政治犯収容所への拘禁が可能となる。そのため北当局が立法の必要性すら感じていないのではとの分析が出ている。

昨年には金日成に対する忠誠義務を骨子とする従来の10大原則が、金日成-金正日に対する忠誠義務を内容とする新しい10大原則に改正された。新しい原則は計10条60項で構成され、全ての項は「?しなければならない」で終わる。「?してはいけない」という表現は無い。

人民保安部は「最高尊厳を毀損してはいけない」という形式で住民教養を実施したが、住民側では多少馴染みの無いプロパガンダ方式であったとも考えられる。逆に誰かが金正恩の尊厳を冒涜しているため、「冒涜してはいけないという指針が出たのでは」という解釈も可能だ。

消息筋は「人民保安部の指針が下された後、幹部の間で『最高尊厳』という用語がよく使われたが、しまいには住民も『最高尊厳』と話すようになった。テレビを見ながら『最高尊厳の横の人間は誰だ』と冗談交じりに話したりする。最高尊厳という用語は国が最初に使用したため、住民が最高尊厳を口にしても保安員は取り締まることができない。『最高尊厳という用語を使うな』と言うわけにもいかず、『この用語をもっと使え』と言うことも出来ない状況」と話した。

こうした現象と関連し、住民の間で金正恩の象徴的なイメージがまだ完成していないことが原因との分析も出ている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

咸鏡北道の消息筋は「昨年までは児童絵本『少年大将』になぞらえ『スェメ大将』という(金正恩に対する)別称が流行した。元帥様に対しては首領様(金日成氏)、将軍様(金正日氏)のように一般化した敬語がまだない」と話した。

北朝鮮で最も有名なアニメーションと評価される「少年大将」では、外敵と内部スパイに対抗し国を守る主人公の少年「スェメ」の活躍が描かれている。「スェメ」とは「鉄の棒」という意味。咸鏡北道の国境地域の住民は、金正恩体制発足以降、国境統制と処罰が強化されていることに不満を抱いており、金正恩を「スェメ大将」と呼んだりもすると消息筋は説明する。

金正恩は後継者として公式に登場するまで「セッピョル将軍」「青年大将」などと呼ばれてきた。2010年に公式に後継者として登場してしばらくは、「尊敬する大将同志」と呼ばれることもあった。現在、労働新聞などの北朝鮮メディアは、状況に応じて「元帥様」「将軍様」「同志」「閣下」などと複数の呼称を使用している。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

2月の離散家族再会行事に参加した北側家族の間でも呼称の不統一性が垣間見れた。当時、北側家族は金正恩を表現する際、「将軍様」「元帥様」「指導者同志」などと多様な呼称を使用した。間違った呼称ではないものの、金正恩がすぐに思い浮かぶ呼称ではなかったといえる。

呼称に限ってのみ言うならば、3代父子世襲と若い年齢という金正恩のハンディキャップは現在進行中だ。個人の偶像化に関しては「現存最高」と評価される北朝鮮の宣伝扇動技術がみすぼらしく見えるほどである。