北朝鮮の各道には、中国を自由に訪問し道レベルの貿易を受け持つ「業務員」という人間が存在する。道内の特産物や生産品を中国に売り外貨を稼ぐ仕事を専門とする。彼らは貿易を通して現金を手に入れるため、財政難に苦しむ道人民委員会において重要な役割を担っている。


通常、各道には10人程度の業務員がいるが、中国の企業との貿易契約を成立させる一種の「セールス」を行う必要があるため、中国への出入りが随時可能。しかし張成沢の処刑以降、貿易を担当する業務員への監視が強化されたという。張成沢が貿易に関与する過程で不正行為を働いたと北朝鮮が公表しているだけに、彼の影響下にいた業務員に対する取締り強化の意図が読み取れる。


平安南道と黄海北道の消息筋によれば、業務員は該当の人民委員会と国家安全保衛部外事課で発給されたビザを含む旅券があれば出国できた。彼らは関連幹部に賄賂を渡さなければならないが、随時中国を訪問するため、ビザの発給は形式的な手続きに過ぎない。しかし張成沢処刑以降はこうしたビザ発給手続きが複雑になり、業務員が居住する地域の保衛指導員と保安員のサインが必要になったという。


これは北朝鮮当局が張成沢の側近として彼とともに不正行為を働いた業務員が、家族を連れて脱北する可能性があると判断、家族の動向を把握すると同時に業務員の出国を統制するためだと消息筋は話した。


黄海北道の消息筋は「通常は道機関の幹部や保衛部及び保安部の幹部は業務員と親しく、道の経営と機関のための業務であるため、サインを受け取るのは簡単だった。最近は居住地域の保衛指導員と保安員のサインと推薦書を受け取る必要がある。彼らはますます仕事がしづらくなった」と説明した。


北朝鮮当局のこうした措置に対し消息筋は「業務員の家族が住む人民班の保衛指導員と保安員を通し、家族の不審な動向を事前に察知し、業務員の脱北や亡命などを防ぐ目的がある。張成沢と関係がある業務員の不正が発覚した場合、脱北の可能性が高いと当局は見ている」と話した。


平南の消息筋も「平安南道平城地域で対中貿易を行うある外貨稼ぎ労働者は『2014年からは貿易業者がビザを発給してもらうためには居住地域の人民班の担当保衛指導員と保安員のサインが必要』と話していた。専門外貨稼ぎ労働者の場合はこうしたサインなしに公務レベルでビザが発給されることが多かったが、最近は厳しくなった」と話した。


業務員は通常、一年に二度、ビザの発給を受ける必要があるが、6ヶ月前から申請しなければならない。この間に彼らは平壌を出入りしながら賄賂を渡す。中央党幹部、国家保衛部外事課の関係者、彼らの両親の還暦などをはじめ、彼らの子の結婚式なども配慮しなければならない。このようにして賄賂さえ渡せばビザは容易に受け取ることができる。ビザがあれば6ヶ月間は随時中国訪問が可能となる。ところが最近では居住地域の保衛指導員と保安員の許可も必要となり、業務員は彼らに渡す賄賂も準備しなければならなくなった。


業務員はこれらとは別途、統一戦線部から外国人や韓国人と接触する際に注意すべき点に関する教育を受けなければならない。業務員に限らず、外国人と頻繁に接触する税関職員、対外貿易会社の職員も同様である。


一方、北朝鮮は住民の外国旅行を徹底的に統制しており、住民自ら北朝鮮駐在の外国大使館にビザを申請することはできない。例外として中国の親戚訪問は可能だが、担当保衛員と保安員の推薦書があっても、保衛部外事課経由でビザが下りる。


会社勤めの場合は職場に常駐する保衛指導員と保安員の推薦を受け、無職の女性などは該当の人民班から推薦を受ける。提出した出国申請書は国家安全保衛部外事課へと渡り、問題がなければ中国大使館が発給したビザとともに旅券が個人に渡される。


個人の場合も業務員同様、数盾ゥら数百ドルの賄賂を渡せば早期に旅券を受け取ることができる。居住地域の保衛部員や保安員をはじめ、道保衛部外事課職員などに賄賂を渡さないと、旅券受け取りまで数ヶ月間待たなければならないと消息筋は伝えた。

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