デイリーNK内部消息筋によると、黄海南道に展開する朝鮮人民軍第4軍団傘下のある旅団では最近、「名誉軍人(傷痍軍人)家庭の支援」を名目に、指揮部に属する将校らに対し、今月30日までに各家庭でトウモロコシ5キロを納めるよう指示が出された。この命令は今月14日、軍団政治部から下されたもので、朝鮮労党大会決定の貫徹と結び付け「忠誠心の証明」を求める圧力が伴っているという。

北朝鮮では、上層部からの指示が人事評価や昇進に直結する構造が強く、消息筋は「将校の妻や家族は、夫や父の昇進に影響するため、こうした要求を拒むことが極めて難しい」と指摘する。一般住民の間では、軍支援を名目とした穀物や肉類の供出要求に抵抗する動きも見られるが、軍関係者の家族は立場上それが困難で、むしろ迅速な履行を迫られているという。

背景には、政治的評価への影響を恐れる心理がある。特に「忠誠」と結び付けられた指示を怠れば不利益を被るとの懸念が強く、家族側は生活を犠牲にしてでも応じざるを得ない状況に置かれているとみられる。

こうした上納要求は将校家族の生活を直撃している。消息筋は「将校家族への配給は極めて限られており、妻が商売や農業で補わなければ生計維持は難しい」と説明。ただ、軍関係者の家族は原則として自由な経済活動が制限されており、収入確保の手段も限られている。

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さらに、最高指導部の方針により、将校家族には兵士を「実の子のように支える」役割が求められ、食糧や副食の提供といった負担も常態化している。配給だけでは生活が成り立たない中での追加的な供出は、家計を一層圧迫しているとの指摘が出ている。

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加えて、将校家族は厳格な規律の下で組織生活への参加も義務付けられている。「家族小隊」に所属し、生活総括や思想学習、講演会への出席に加え、各種動員にも欠かさず参加しなければならないという。

それでも部隊側は「全国が党大会決定の履行に向けて沸き立っている中、軍が黙っているわけにはいかない」として、忠誠心を強調しながら上納を促しているとされる。生活に苦しむ将校家族の間では、こうした指示が下るたびにため息が広がっているという。