「生活除隊されれば、社会に出て出世の可能性がなくなるが、それでもいいのか」
これに対して兵士は「それでもいい」と返したという。兵役を期間満了で終えるのではなく、途中で辞めさせられて実家に戻った者は、朝鮮労働党への入党や大学入学のチャンスが与えられず、「いったい何をやらかしたのか」という世間の白い目に晒されつつ、一生貧しい暮らしを強いられることになる。
人生まだこれからの19歳の若者に、「人生どうなってもかまわない」と言わせてしまうほど、食糧状況が悪いということだ。
(参考記事:国境警備隊が強盗に変身…食糧難の北朝鮮で治安悪化)なしくずし的に進んだ市場経済化がうまくいき、一般庶民も飢えることなく生活できるようになっていた2010年代でも、軍では深刻な食糧不足が続いていた。栄養失調になり実家に一時的に送り返される者が多くいて、国全体の食糧事情が悪くなった今、軍とて例外ではない。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)だが、兵士の要望を認めてしまうと、空腹に耐えかねて除隊処分を受けるために脱走する者が続出し、部隊が瓦解してしまいかねない。部隊は、彼を軍に所属させたまま、最もしんどい現場に送り込む処分を下した。再び鍛え直すのが正解だと判断したのだ。
しかし、情報筋はこのやり方に疑問を呈した。
「部隊は、臨時措置で脱走を抑えているが、劣悪な環境、空腹、病気による脱走の問題は簡単には解決できないだろう」
