北朝鮮がロシアに派兵した兵士のうち、ウクライナ軍に捕虜となった2人をめぐる情報が国内に広まり、当局が統制に躍起になっている。金正恩総書記は、ロシアで戦った将兵や戦死者を「英雄」として称える宣伝を強めているが、国民の間では懐疑的な見方が広がっているようだ。

ウクライナ側は2025年1月、ロシア西部クルスク州で戦闘に参加していた北朝鮮兵2人を捕虜として拘束したと発表した。兵士らは取り調べを受けており、負傷はしているものの命に別条はないとされる。韓国政府も、彼らが韓国への移送や亡命を希望する可能性についてウクライナ側と協議を進めている。

こうした動きと並行して、北朝鮮国内では捕虜となった兵士に関する噂や情報が密かに広まっている。デイリーNKの現地情報筋が12日までに伝えたところでは、中国との国境地帯を中心に、捕虜の情報が拡散。当局は噂の発信源の特定や拡散防止に乗り出しており、住民に対する統制を強めているという。

金正恩氏は最近、ロシアで戦う北朝鮮軍兵士について「いかなる報酬や対価、利害関係もなく戦場で戦っている」と繰り返し強調している。北朝鮮メディアでも、ロシアとの「戦闘的友誼」を強調し、戦死者や参戦兵士を英雄視する報道が続いている。

しかし、住民の間ではこれとは異なる見方が広がっている。内部情報筋によれば早い段階から「ロシアが戦死者の数に応じて外貨を支払っている」「兵士がカネのために殺されている」との噂が出回っており、体制への不信感を刺激しているという。北朝鮮政府がロシアから資金や軍事技術など何らかの見返りを得ているのは確実視されているが、その利益が一般国民の生活改善に結びついている兆しは乏しい。

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さらに当局を神経質にさせているのが、捕虜となった兵士の今後だ。ウクライナ側は、捕虜が希望すれば第三国での定住の可能性も示唆しており、2人は実際に韓国への亡命を望んでいる。

もし彼らが韓国に渡れば、ロシア派兵の実態や戦場の状況などに関する生々しい証言が国際社会に広く発信される可能性が高い。その情報はやがて北朝鮮国内にも流入しかねない。

情報統制を国家統治の基盤としてきた北朝鮮にとって、捕虜兵士の存在は小さくない火種だ。金正恩政権は、英雄化と宣伝で世論の引き締めを図る構えだが、外部情報が入り始めた社会で、その効果がどこまで続くのかは不透明だ。