北朝鮮が12日、新型駆逐艦「崔賢」号から戦略巡航ミサイルと対艦ミサイルの試射を実施した。朝鮮中央通信によれば、発射は艦艇の武器統合指揮システムの検証や乗員の運用能力向上を目的としたもので、金正恩総書記自らが視察し、「核戦争抑止力の強化」を改めて強調した。

金正恩氏はこのところ、海軍艦艇の核ミサイル能力強化に熱心に取り組んでいるが、その裏には同国海軍が抱える構造的な限界が透けて見える。とりわけ問題となるのが、艦艇運用の前提となる燃料事情だ。

北朝鮮の石油供給は中国からのパイプラインに大きく依存し、制裁下で総量の大幅増加は見込みにくい。違法な海上取引なども指摘されるが、全体構造を変えるほどの規模ではないとみられている。

この現実は、海軍力を厳しく制限する。

大型駆逐艦のような水上戦闘艦は、本来であれば継続的な訓練と長時間の航行を通じて戦力化される。しかし燃料が限られる北朝鮮では、こうした「常時運用型」の海軍は成立しにくい。結果として艦艇は平時、多くの時間を港湾で過ごし、必要なときにのみ出動する“限定運用”にとどまる可能性が高い。

有事においては、その傾向はさらに顕著となる。専門家の間では、北朝鮮の水上艦は開戦初期にミサイルを一斉発射する「発射プラットフォーム」としての役割が重視され、その後の生存は必ずしも前提とされていないとの見方が強い。制空権を握る米韓軍の攻撃に対し脆弱である以上、港湾に留まっていても、出撃しても高いリスクにさらされるためだ。

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このため、「崔賢」号のような新型艦であっても、その真価が発揮されるのは一度限り、すなわち開戦初期の飽和攻撃の局面に集中する可能性がある。発射能力そのものが抑止力として機能する一方、継戦能力は二の次となる構造だ。

もっとも、こうした戦力設計は単なる弱点ではない。むしろ、限られた資源の中で最大の軍事的効果を引き出すための現実的選択とも言える。地上発射台や潜水艦と組み合わせ、多方向から同時に攻撃を仕掛けることで、相手の防御を飽和させる狙いがある。

それでもなお、海に浮かぶ艦隊の将来像は厳しい。燃料不足という見えない制約の下で、北朝鮮の新鋭艦は「動ける艦隊」ではなく、「撃つためだけに存在する艦隊」へと変質しつつある。華々しい試射の映像とは裏腹に、その運命はきわめて限定的なものとなる可能性が高い。