精鋭を集めた部隊だけに、容疑者の腕もなかなかのものだったようだ。だが、実の兄が政権を批判する発言を行った容疑で、管理所(政治犯収容所)送りとなり、家族にも連座制が適用され、弟である容疑者も除隊させられた。

軍人としてのプライドが非常に高かったようで、除隊させられたことを恥と感じ、実家に戻ってからは、配属された職場にも出勤せず、荒れた生活を送っていた。そして、犯罪に手を染めてしまい、安全部の留置場に入れられ、予審(基礎までの証拠固めの段階)を受けている段階で脱獄を図った。彼は教化所(刑務所)に送られることが決まっていたという。

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事件直後、地元には外出禁止令が出され、事件のことはあっという間に口コミで広がった。通常なら、安全員や保衛員(秘密警察)が被害者となる事件なら、日頃の行いの悪さから、「やられて当然」と言ったリアクションが出るところだが、今回の場合は、あまりにも残虐な犯行に、「処罰を受けるのは当然」という声が大勢を占めるという。

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一方で、兄弟のことをよく知る知人たちは、同情を示している。

「兄が犯した罪なのに、何の関係もない弟まで責任を問われ、強制的に除隊させられた。そんなことをしなければ、事件は起こらなかっただろう」

軍を生活除隊(不名誉除隊)させられ、実家に戻ってくると、地域の人からは白い目で見られる。誇り高き朝鮮人民軍の軍人として、耐え難い羞恥だったのだろう。