北朝鮮で朝鮮労働党大会が開幕した。しかし、これまで公式行事で頻繁に姿を見せてきた金正恩総書記の娘、ジュエ氏の姿は確認されていない。

この「不在」は、後継者内定説が後退したことを意味するわけではない。むしろ、金正恩氏が彼女を本気で後継者に育て上げる意志を持っているからこそ、10代前半では党員になれないルールをあえて捻じ曲げるなどせず、慎重に露出を管理している可能性が高い。

ジュエ氏は、弾道ミサイルの発射実験や軍事パレードといった象徴的な場面に同行し、「核戦力の後継者」というイメージを世界に印象づけられてきた。

これは、単なる親子の演出ではなく、国内エリート層と国民に対し、次代の指導者像を刷り込む政治的演出と見るべきだ。ただし、現段階で彼女を前面に押し出しすぎれば、年齢や経験不足への反発、内部権力闘争の火種となりかねない。だから党大会のような最重要政治イベントでは、あえて表舞台から外した可能性がある。

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真の焦点は、彼女が将来どのような人物に成長するかにある。父と同様に軍事力を背景に恐怖政治を敷く指導者となるのか、それとも経済や生活改善を重視する柔軟な統治者となるのか。国際社会との関係改善を模索する現実主義者に育つ可能性も、完全には否定できない。もっとも、北朝鮮という閉鎖的な体制の中で育つ以上、体制維持を最優先する価値観を身につけることは避けられないだろう。

金正恩氏が本気で娘への権力継承を目指すなら、今後は教育内容や随行先、露出の仕方に微妙な変化が現れるはずだ。ジュエ氏の「不在」は、その序章にすぎない。党大会の舞台裏で進む静かな準備こそが、北朝鮮の次の時代を左右する最大の鍵となる。