金正恩総書記の実娘とされる金ジュエ氏に、内外の注目が集まっている。韓国の国家情報院は今月12日、「後継者に内定したとの見方が有力だ」と報告した。軍事行事や大型建設事業に同行する姿は、後継演出と見るのが自然だろう。
しかし、金正恩・ジュエ父娘の“距離感”には、相変わらず拭いがたい違和感がある。
金正恩・金ジュエ父娘と李雪主夫人は2月16日、「和盛地区第4段階1万世帯住宅」竣工式に出席。ひな壇上で父娘は、国家儀式とは思えぬほど私的に絡み合い、異様な光景を演出した。
国家的記念日における最高指導者と次期後継者の振る舞いとしては、異様と言わざるをえない。昨年12月のホテル視察でも同様の振る舞いを見せ、北朝鮮内部からは「おぞましい」との声も出ていた。
(参考記事:【写真】金正恩父娘“恋人のような密着シーン”に北朝鮮内部から「おぞましい」との違和感も)
しかもこの日は、金正日の生誕記念日「光明星節」であり、金日成の「太陽節」と並ぶ最重要の日程だ。恒例行事である霊廟「錦繍山太陽宮殿」への参拝ではなく、自らの業績を誇示する国家行事をあえてこの日に重ねた。さらにひな壇では、歪なスキンシップで国家儀式を王朝儀式へと塗り替えた。
二人の距離感は、金正恩王朝の統治の歪みをあらわにする。先代の神話を葬って都合よく上書きし、ひな壇では公私の区別を失ったかのような振る舞いを見せる――異を唱える者がいなければ、判断は内向きになり、現実から遠ざかる。周囲が拍手だけを送る空間で、指導者は自らを客観視できなくなる。いま見えているのは、王朝化した国家と、進言を失った“裸の王様”の姿である。
