金日成・金正日神話が決定的に葬られる時が来た。故金正日国防委員長の生誕記念日「光明星節(2月16日)」に、金正恩総書記は娘ジュエ氏とともに和盛地区第4段階1万世帯住宅の竣工式に出席した。

2月16日に報じられたロシア派兵戦死者遺族の住宅竣工式(2月15日)を報じる映像では、金ジュエ氏が金正恩氏の前に立つなど、これまで以上に次世代の後継体制を強調する演出が目立った。

祖父・金日成主席の生誕記念日「太陽節(4月15日)」と光明星節は、これまで北朝鮮最大の記念日とされ、二人の遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿の参拝、ならびに追悼行事は必須行事とされてきた。

しかし金正恩氏は昨年も同地区の着工式や第3段階竣工式に出席しながら参拝は見送ったようだ。今年も現時点(2月16日)で報じられていない。

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金日成・金正日という先代の神格化を再確認する国家的儀礼を後ろに追いやり、自身の肝いり高層マンション建設プロジェクトの竣工式を大々的に誇示した意味は小さくない。

太陽節や光明星節という“先代神話の祭日”に参拝せず、自身の住宅建設事業を前面に出す演出は、単なる世代交代ではない。そこには、「過去の負債より、今の成果を見よ」という無言の主張がにじむ。

さらに深読みすれば、経済復興を成し遂げられなかった先代の負の遺産を、ここで葬るという意志とも捉えられる。経済制裁と慢性的停滞という重荷を背負う中で、権威の源泉を過去の神話から自らの統治実績へと移す——それは単なる移行ではなく、事実上の“上書き”である。

そこには、先代神話を葬り、金正恩氏を「新たな始祖」と位置づけ、その正統性を実娘・金ジュエへと継承させるという構図が浮かび上がる。和盛の高層マンションは、新たな「白頭の血統」時代を刻むモニュメントなのかもしれない。