北朝鮮で新たに整備された「セッピョル通り」の竣工式が15日、平壌で行われた。金正恩総書記が娘の金ジュエ氏を伴って出席し、住宅建設の成果を誇示する国家的行事として大々的に演出された。しかし、その舞台裏では、異常とも言える短期間で工事が強行された実態が浮かび上がっている。

金正恩氏は昨年8月末、平壌に新たな大規模住宅通りを建設し、「セッピョル通り」と命名する計画を公表した。そこから竣工式まで、わずか半年余り。平壌では「未来科学者通り」や「黎明通り」、「松花通り」といった超大型のタワマン街が、いずれも約1年で竣工した先例がある。

規模の差はあれ、それらと比べても今回の工事期間は際立って短い。政治日程に合わせるため無理に圧縮した可能性が高いと言わざるを得ない。

建設現場では軍部隊や青年突撃隊が大量に動員され、昼夜を問わない24時間体制の突貫工事が続けられたはずだ。資材不足を補うため、質の劣るセメントや鉄筋が使用されるのは当たり前で、耐震性や耐久性への懸念が常についてまわる。実際、北朝鮮では短期完成を競う建設事業の結果、壁面の亀裂、床の沈下、さらには建物の崩落といった事故が相次いできた。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

こうした住宅に、ロシア派兵で戦死した兵士の家族が優先的に入居させられるという。当局は戦没者遺族への「最大限の配慮」として新築住宅の提供を強調し、体制の恩恵を誇示する。しかし、その実態が安全性に疑問の残る建物であれば、国家が遺族を再び危険にさらす皮肉な構図となる。息子を戦地で失った家族が、今度は欠陥住宅の倒壊リスクに直面する事態は、あまりにも残酷だ。

デイリーNKジャパンはかつて、2016年に脱北した元北朝鮮軍兵士から話を聞いていた。この元兵士は、未来科学者通りの建設に動員された経験があるという。

「当初は安全管理についても関係当局から厳しく指導されていました。しかし、現場に供給されているはずの資材が足りないといったことが、次第に増えました。現場の監督には、その問題を追及する権限がありません。横流しは、もっと上の方(上層部)がからんでいたのでしょう。しかも、どんどん工期が迫ってくる。セメントと砂の混合比率や鉄筋の使用量が、上層階に行くほどいい加減になっていきました。北朝鮮で地震はほとんど起きませんが、いずれ何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してもおかしくありません」

背景には、金正恩体制が「人民生活向上」の成果を内外に誇示する狙いと、党大会など重要政治日程を強く意識した事情がある。記念日や政治イベントに合わせた成果の演出が、建設現場に過酷なノルマを課し、結果として事故や欠陥を常態化させてきたのが北朝鮮の実情だ。