北朝鮮は、国際制裁の長期化、自然災害の頻発、慢性的な食糧不足、感染症流行など、複合的危機にさらされ続けている。こうした状況下で金正恩政権は、社会統制と国家動員の強化によって危機管理を図ってきた。
しかし、韓国の政府系シンクタンク・統一研究院は12日に公開した研究報告書『北韓社会体制の危機と対応』の中で、こうした「引き締め型統治」こそが、「北朝鮮社会の危機対応能力を中長期的に弱体化させる主要因となっている」と警告している。この分析が当たっているとすれば、金正恩体制は自ら「限界」と「自滅」に突き進んでいる事になる。
同研究院は、北朝鮮の統治方式を「高度に集権化された統制システム」と規定したうえで、「短期的な秩序維持と引き換えに、社会の柔軟性と回復力を著しく損なっている」と指摘する。
とりわけ市場活動、民間ネットワーク、地域共同体といった「社会の自律的調整装置」が体系的に抑圧されている点を問題視し、「国家がすべてを配分しなければ社会が機能しない構造が固定化されつつある」と分析している。
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危機耐性とは、社会が外部ショックを吸収し、環境変化に適応する能力を指す。研究院は、「市場と民間流通網は、北朝鮮における事実上の生命線であり、危機時の緩衝装置として機能してきた」としながらも、「近年の強力な市場抑制政策は、こうした調整機能を体系的に解体している」と指摘する。その結果、「国家主導型の一元的配分体制への逆行が進み、社会全体の弾力性が著しく低下している」と結論づけている。
新型コロナウイルス流行下で実施された国境封鎖は、その典型例とされる。研究院は、当時の状況について「貿易と物流のほぼ全面的な遮断は、地方を中心に深刻な物資欠乏と生活難を招いた」と総括し、「市場が部分的にでも機能していれば、供給ショックの緩和は可能だった」と指摘する。一方で、過度な統制によって「国家配給能力の構造的限界が露呈した」とし、中央集権的危機管理の脆弱性を浮き彫りにしたと評価している。
さらに、地方行政や工場、農村における裁量権の剥奪も、危機耐性低下の重要な要因とされる。研究院は、「すべての判断が上部機関の指示待ちとなる体制では、現場の即応力が著しく制約される」とし、「突発的危機への初動対応の遅れが、被害拡大を招く構造が固定化している」と分析する。また、住民による自助努力や相互扶助のネットワークについても、「統制の強化は、社会的連帯を弱体化させ、住民の生存戦略を個別化・地下化させている」と警告している。
こうした状況を踏まえ、研究院は現在の北朝鮮社会を「表面的安定と構造的脆弱性が併存する不安定均衡状態」と定義する。「強圧的統治は短期的には秩序と統制を回復するが、長期的には社会の自己調整能力を破壊し、より深刻な危機を招く」とし、「引き締め政策の持続は、体制の延命には寄与しても、突発的崩壊リスクを累積的に高める」と結論づけている。
研究院は最後に、「統制による安定は、本質的に脆弱であり、危機が発生するたびに、より大きな動員と弾圧を必要とする悪循環に陥る」と指摘し、北朝鮮体制が抱える構造的限界に警鐘を鳴らしている。
