金正恩総書記の娘・金ジュエ氏に「触れた」とされ、一時は粛清まで心配された努光鉄(ノ・グヮンチョル)国防相が、25日に金総書記が万寿台創作社を訪問した際、同行していたことが北朝鮮メディアで確認された。ロシア派遣兵を称える彫刻制作を指導する場に同席していた事実は、少なくとも現時点では努氏が粛清を免れ、「健在」であることを示している。

しかし、この一件をもって北朝鮮高官の安泰を語ることはできない。

最近はキム・チョルハ化学工業相や、機械工業分野を統括していたヤン・スンホ(楊勝虎)副首相ら、経済分野の要職にあった幹部の更迭が相次いでいる。具体的な責任の所在や処分理由は一切明かされず、突然姿を消す例も珍しくない。

独裁体制下の北朝鮮では、最高指導者の「信任」は法や制度ではなく、極めて恣意的な感情や政治的都合に左右される。昨日まで重用されていた幹部が、些細な失態や権力闘争の余波で一転して断罪されることも珍しくない。

(参考記事:「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も”残酷な夜”

経済不振やロシア派兵をめぐる国際的圧力が強まる中、金正恩体制は成果を急ぐあまり、責任を末端や中間幹部に転嫁しがちだ。その結果、高官たちは常に「次は自分かもしれない」という恐怖と隣り合わせで職務に当たっている。生殺与奪を一人の独裁者に握られた北朝鮮の権力中枢は、今日の同行が明日の失脚を保証しない、一寸先は闇の世界である。