北朝鮮が最高指導者暗殺未遂を描いた映画『対決の昼と夜』を朝鮮中央テレビで放映する中、劇中で描かれた事件を記憶する人々から、熱い反応が出ているという。
デイリーNKの咸鏡北道の情報筋は「新作映画『対決の昼と夜』が住民の間で話題になっているが、反応は世代別の違いが明確だ」と伝えた。
『対決の昼と夜』は、最高指導者の現地指導日程を狙った暗殺計画を軸に、内部に潜入したスパイと保衛・治安機関の対決を描いた政治映画で、体制を脅かす“内部の敵”の危険性と指導者への忠誠を強調する内容となっている。
情報筋によると、この映画は朝鮮中央テレビで放映されたほか、DVDやUSBなどの保存媒体を通じても急速に広まり、「見ていない人はいないほどだ」と言われている。
こうした中、年配世代の間では、映画をきっかけに過去の龍川駅爆発事件が再び話題に上っているという。
龍川駅爆発事件は2004年4月、平安北道龍川郡の鉄道駅で発生した大規模爆発事故で、1500人もの死傷者と甚大な被害を出した。公式には化学肥料に用いられる硝酸アンモニウムを積んだ貨車が爆発したものと発表されたが、当時から「指導部を狙ったテロではないか」「内部に潜入したスパイの仕業ではないか」との噂が根強く残っている。
(参考記事:【写真】1500人死傷に8千棟が吹き飛ぶ…北朝鮮「謎の大爆発」事故)
情報筋は「年配の人たちは映画を見て、かつて社会を震撼させた龍川駅爆発事件を思い出し、怒りと敵意を強めている」とし、「被害の大きさに加え、スパイによる犯行だという認識が今も事実のように受け止められているためだ」と語った。
さらに「忘れかけられていた事件が、この映画を通じて再び呼び起こされた」とし、「映画の主人公リ・テイルに対し、『殺しても気が済まないやつだ』『成功もしなかったくせに人々だけを犠牲にした』などと、罵声を浴びせる年配者も少なくない」と述べた。
こうした反応が出るのは、爆発が起きる少し前に、特別列車で中国を訪問した金正日総書記の一行が通過していたという事実があったためだろう。事件の真相にはいまだに謎が残るが、北朝鮮国民の間に「スパイ犯行説」が残っている現実は、「敵」の脅威を強調して内部統制をはかる当局にとって、悪くない環境を提供しているかもしれない。
