北朝鮮が最高指導者暗殺未遂を描いた映画『対決の昼と夜』を朝鮮中央テレビで放映する中、映画を見た住民の反応は世代によって大きく分かれている。年配世代は感情移入して敵愾心や怒りをあらわにする一方、若者たちは単なる娯楽として受け止めているという。
22日、デイリーNKの咸鏡北道消息筋は「新作映画『対決の昼と夜』が住民の間で話題になっているが、反応は世代別の違いが明確だ」と伝えた。
『対決の昼と夜』は、最高指導者の現地指導日程を狙った暗殺計画を軸に、内部に潜入したスパイと保衛・治安機関の対決を描いた政治映画で、体制を脅かす“内部の敵”の危険性と指導者への忠誠を強調する内容となっている。
消息筋によると、この映画は朝鮮中央テレビで放映されたほか、DVDやUSBなどの保存媒体を通じても急速に広まり、「見ていない人はいないほどだ」と言われている。
こうした中、年配世代の間では、映画をきっかけに過去の龍川駅爆発事件が再び話題に上っているという。
龍川駅爆発事件は2004年4月、平安北道龍川郡の鉄道駅で発生した大規模爆発事故で、多数の死傷者と甚大な被害を出した。公式には化学肥料に用いられる硝酸アンモニウムを積んだ貨車が爆発したものと発表されたが、当時から「指導部を狙ったテロではないか」「内部に潜入したスパイの仕業ではないか」との噂が根強く残っている。
(参考記事:1500人死傷に8千棟が吹き飛ぶ…北朝鮮「謎の大爆発」事故)
消息筋は「年配の人たちは映画を見て、かつて社会を震撼させた龍川駅爆発事件を思い出し、怒りと敵意を強めている」とし、「被害の大きさに加え、スパイによる犯行だという認識が今も事実のように受け止められているためだ」と語った。
さらに「忘れかけられていた事件が、この映画を通じて再び呼び起こされた」とし、「映画の主人公リ・テイルに対し、『殺しても気が済まないやつだ』『成功もしなかったくせに人々だけを犠牲にした』などと、罵声を浴びせる年配者も少なくない」と述べた。
一方、若者層は「お前、スパイじゃないのか」「正直に言え」「お前のそばに俺がいる」など、映画のせりふを冗談交じりに言い合い、軽い娯楽として消費している雰囲気だという。
消息筋は「若者は年配世代とはまったく違う視点で映画を見ている」とし、「俳優の演技や印象的なせりふに関心を向けているだけだ」と伝えた。
北朝鮮当局はこの映画を通じ、体制への脅威に対する警戒心を高め、内部結束を図る狙いがあったとみられる。しかし若者たちは、映画に込められた政治的・思想的メッセージを読み取ろうとはせず、単なる娯楽作品として受け止めているという。
このため一部では、「若者層の思想的緊張がそれだけ緩んでいることを示しているのではないか」との見方も出ている。
消息筋は「北朝鮮で映画が体制宣伝を目的に作られていることは若者も理解しているが、その“意図”には大きな関心を示さない」とし、「国家が望む思想教育とは裏腹に、若者は面白さだけを楽しんでいる」と語った。
さらに「今回の反応を見る限り、映画はもはや若者にとって有効な宣伝手段ではない」とし、「むしろ社会主義愛国青年同盟80周年の『1号行事』のような直接的な動員行事の方が、忠誠心を高めるうえでは効果的だろう」と付け加えた。
