北朝鮮・両江道恵山市で行われた女性の服装取り締まりが、同国社会に根付く階級構造をあらためて浮き彫りにしている。派手な装飾品や体のラインが強調される服装を理由に一般女性が摘発される一方、幹部家庭と見られる女性は事実上、黙認されていたという。

北朝鮮内部情報に詳しいデイリーNKによると、今月20日、恵山市の主要道路に朝鮮社会主義女性同盟(女盟)と社会主義愛国青年同盟(青年同盟)の取締班が配置され、「非社会主義的な服装」を理由に女性への集中取り締まりが行われた。取締班は大ぶりで光沢のあるイヤリングを着用した女性や、極端に細身のズボンを履いた女性を呼び止め、所属や居住地を確認したという。

一部の取締班員は、冬用の外套で隠れたズボンのラインを確かめるため、上着を持ち上げるよう要求したとも伝えられている。消息筋は「近年は大学生だけでなく中年女性でもイヤリングをするのは珍しくない。問題にされたのは装飾そのものではなく、目立つ華美さだった」と話す。

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しかし、取り締まりは一律ではなかった。明らかに派手な装いでも、幹部家庭の「ご令嬢」と見られる女性については、女盟の取締班が事実上、見て見ぬふりをしたという。取締班内部では「幹部の子どもに手を出して不利益を被るわけにはいかない」との声も上がっていたとされる。

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こうした光景は、平壌で繰り返し見られてきた最高指導部周辺の装いと重なる。李雪主夫人は海外高級ブランドとみられる衣類やバッグを身につけて公式行事に登場し、金正恩総書記の娘・金ジュエ氏も洗練された服装で注目を集めてきた。金与正党副部長についても、高級腕時計や衣類が国外で話題になることが少なくない。これらはいずれも「非社会主義的」とは扱われない。

建前上、北朝鮮は「階級のない社会」を掲げるが、実態は出身成分や親の地位によって統制の厳しさが大きく異なる。幹部層は特別供給や外貨ルートを通じて高級品を入手でき、多少派手な装いでも問題視されない。一方、恵山市のような地方都市では、同様の服装が即座に摘発対象となる。

恵山市の住民からは「取り締まりにも身分があるのか」「同じ服でも誰が着るかで結果が変わるのか」と不満の声が相次いでいる。消息筋は「こうした不公平な統制を前に、社会主義的規範を本気で信じる住民は少ない」と語る。地方都市で起きた一件は、北朝鮮社会が抱える“見えない階級社会”の現実を端的に示している。