米連邦捜査局(FBI)は、北朝鮮の金正恩政権の資金洗浄や制裁回避に深く関与したとされる北朝鮮出身の金融仲介者に対し、最大700万ドル(約11億円)の懸賞金をかけて身柄確保を呼びかけていることが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が26日に報じた。この人物は、「影の銀行家」として複雑な国際金融取引を駆使して制裁網をかいくぐり、平壌政権の外貨調達を支援した疑いがあるという。
米司法省の起訴状などによれば、問題の人物はシム・ヒョンソプ(Sim Hyon-Sop)とされ、過去に米ドル建て取引で合計7,400万ドル以上の資金が複数の米国銀行を経由した痕跡があるという。これらの資金は最終的に北朝鮮当局の利益のために使われた疑いがあるとしている。
シムは、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシア、香港などを拠点に複数の幽霊会社やフロント組織を設立し、不正な送金ルートを構築した疑いがある。米国当局は、こうした送金の一部が通信機器やヘリコプターの購入、偽造タバコの原料支払いなどに使われた可能性があるとしている。
また、シムは過去のサイバー攻撃や暗号資産の盗難を通じて得られた資金の洗浄にも関与したとされ、米国の法執行機関はこれを制裁回避ネットワークの中核的役割と位置付けている。
(参考記事:北朝鮮ハッカー、AIで暗号資産犯罪を高度化 「量子より危険」と専門家警鐘)
米FBIは当初、シムに対する情報提供に対し500万ドルの懸賞金を提示していたが、捜査の進展を受けて700万ドルに引き上げたと報じられている。シムが現在、中国に潜伏しているとの見方がある一方、現地当局は同氏の活動について「把握していない」と述べ、米国側の一方的な措置に反発しているという。
WSJはこの報道を通じ、北朝鮮の制裁回避ネットワークが依然として国際金融システムに接続しており、米国の金融監視の抜け穴をついて外貨調達を行っていると指摘している。
