各国で女性従業員による歌や踊りの公演を売りに人気を集めてきた北朝鮮レストランに、再び異変が観測されている。共同通信は17日、中国・北京にある一部の北朝鮮レストランで、北朝鮮出身の女性従業員らが11月下旬以降、一斉に帰国したと報じた。外交筋の間では、中国での勤務に必要なビザに何らかの問題が生じた可能性があるとの見方が出ているとのことだが、詳細は明らかになっていない。店側は代替要員として中国人を雇用したり、北朝鮮料理の提供自体を中断したりするなど、対応に追われている。

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北朝鮮レストランは、海外での外貨獲得手段として各地に展開されてきたが、国連安全保障理事会が2017年、核・ミサイル開発への制裁として北朝鮮の海外派遣労働者の送還を加盟国に求めて以降、衰勢が続いてきた。中国でも表向きは制裁を履行しつつ、留学や研修名目のビザを活用して営業が続けられてきたとの指摘がある。

ただ、こうした海外レストランの運営は、北朝鮮当局にとってもなかなかセンシティブな問題だ。2016年には中国・寧波の北朝鮮レストランで女性従業員らが集団で逃げ出し、韓国に入国した事例が発生した。海外派遣された従業員が一斉に姿を消す事態は、体制の統制力や忠誠心を揺るがしかねず、当局に強い警戒感を抱かせた経緯がある。

近年、中国当局がビザ管理を厳格化している可能性に加え、こうした過去の集団脱北の記憶も、今回の一斉帰国の背景にあるとの見方が出ている。海外勤務の長期化によって女性従業員が結婚適齢期を逃すといった個人的問題も重なり、北朝鮮レストランを取り巻く環境は一段と厳しさを増している。