AUKUSの戦略的価値とハンファの編入

AUKUSは2021年に米英豪が創設したインド太平洋の安全保障パートナーシップだ。柱の一つ「Pillar I」では、豪州に原子力推進攻撃型潜水艦(SSN)8隻を供給する大型計画が進み、事業費は2,680億~3,680億豪ドル(約263~361兆ウォン)に達する。もう一つの「Pillar II」では、量子技術、AI・自律システム、極超音速、電子戦、水中無人システムなど6分野の共同開発を進める。

中国の軍事的拡張に対抗する西側同盟の要とされ、豪国防省は今後10年間で海洋能力に1,450億豪ドル(約142兆ウォン)を投じる計画だ。オースタルUSAは既に米ジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートと約4億5,000万ドル(約6,600億円)の契約を結び、バージニア級・コロンビア級原潜のモジュールを生産している。ハンファが筆頭株主となったことで、AUKUSの中核供給網に自然に組み込まれた格好だ。

さらに2024年9月、AUKUS3カ国が韓国とのPillar II協力を公式協議し、同年10月の米韓国防相会談で防衛科学技術執行委員会の設立に合意したことは、韓国のAUKUS参画可能性を高めるシグナルと受け止められている。

ハンファは2024年6月、米フィラデルフィア造船所を1億ドルで買収し、50億ドル(約7兆円)の投資計画を発表した。鋼製商船・訓練艦のフィリー造船所と、アルミ戦闘艦のオースタルUSAという「両翼」戦略で、米造船市場への全面展開が可能となった。世界の海軍MRO市場は2024年に560~610億ドル規模で、米海軍だけで年200億ドルを支出する。ハンファオーシャンは2024年8月、米海軍の兵站支援艦整備契約を初受注し、MRO市場参入を果たした。

オースタル筆頭株主化とAUKUS供給網入りは、カナダの潜水艦プロジェクト(CPSP、約60兆ウォン)受注にも追い風となり得る。2025年8月、カナダ政府はハンファオーシャンと独TKMSを最終候補に選定。最終契約は2026年中と見込まれる。AUKUSと密接な関係を持つカナダが、米英豪の信頼を得た企業を評価する可能性がある。

課題はITAR順守と人材

世界の軍事造船市場は2034年まで年平均4.6%成長が予測される。ハンファはオースタル、フィリー造船所の取得により米海軍供給網へ直接参入し、世界トップ15防衛企業入りが視野に入った。

ハンファのオースタル筆頭株主化は、K-海洋防衛産業が米豪の先進市場へ踏み出す画期的な一歩だ。AUKUS供給網、米海軍MRO、カナダ潜水艦という三つの大機会をどう生かすかが、次の成長を左右する。

一方で、米国の国際武器取引規則(ITAR)順守は最重要課題だ。DDTC登録・更新、外国人の技術アクセス管理、米国内データセンターの使用、記録保存と教育体制の整備が求められる。違反時は高額罰金や契約資格剥奪の恐れがある。国内では研究開発投資拡大と人材育成も急務で、無人海洋システムやAI統合戦闘体系の開発が中長期の競争力を左右する。