北朝鮮・平安南道平城市でこのところ公開裁判の開催が目立って増えているという。公開処刑など極端な処罰は確認されていないものの、来年予定される第9回党大会を前に、当局が住民による各種の規律違反を公の場で取り上げ、「静かな恐怖」を醸成しながら内部統制を強めているとの見方が出ている。
デイリーNKの現地情報筋は11日、「過去2カ月の間に、平城市党委員会前の広場で公開裁判が何度も開かれた」と証言。「大勢を呼び出した集会で、罪状を暴いて見せしめにする形式の公開裁判が繰り返され、住民は周囲の目を非常に気にして生活している」と述べた。
同情報筋によると、政府は禁制品の販売、規制対象商品の無許可流通、さらには“非社会主義的”な外貨の動きを「社会規律を乱す現象」と定義。こうした行為を対象とした摘発・統制や公開での糾弾作業を一段と強めているという。
公開裁判は犯罪の種類や規模にかかわらず、当局が住民に「こうした行為は許さない」という強いメッセージを送る象徴的措置とされ、恐怖心を利用した統治手法として広く知られている。
(参考記事:引き出された300人…北朝鮮「令嬢処刑」の衝撃場面)
平城で公開裁判が増えている背景について、住民の多くは「9回党大会を控えた内部引き締め」と見ている。経済難を背景に不満や思想離れが深まる中、当局が大規模政治イベントを前に緊張感を高め、住民社会の動揺を抑え込む狙いがあるという分析だ。
情報筋は「党大会を前に規律を整えようとする意図が明白で、大会まで同様の引き締めが続くだろう」「大事件ではなくても公開裁判を開き、あえて『静かな恐怖』を広めている印象だ」と語った。
こうした状況の中、最近平城市では市場で豆油を販売していた商人が当局に摘発され、公開裁判にかけられた事例が住民の間で話題になっている。大量の豆油を流通させ、市場で販売する過程で外貨を扱ったことが問題視されたとされる。当局が市場取引に伴う個人間の外貨取引を重点的に取り締まっているためだ。
情報筋は「大量に物を扱う商人で外貨に触れない人を探すほうが難しい」「ほとんどの商売が外貨と絡むため、取り締まりが強まるほど市場の空気はさらに重くなっている」と指摘した。
