北朝鮮で“失脚説”が絶えなかった朝鮮労働党の李日煥(リ・イルファン)宣伝書記が、約11か月ぶりに中央舞台へ復帰した。10日に公開された党第8期第13回全員会議拡大会議の写真には、壇上前列に座る李氏の姿がはっきりと確認された。

李氏の最後の公式活動は1月2日、金正恩委員長が努力模範者らと記念写真を撮った場だった。その後は行事から完全に姿を消し、韓国国家情報院も「失脚した可能性」を公に示していた。北朝鮮事情通がSTに明かしたところによると、この11カ月あまり、李氏は“不正行為”が問題視され、職務から外されたうえで革命化再教育を受けていたという。

金正恩氏は今年1月、幹部の特権生活や資料漏れなどを問題視し、徹底調査を命じた。対象は中央党初期局の20人余りで、李氏と党組織書記の趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏も含まれていた。

STによれば、調査では李氏が宣伝部傘下の出版事業で中国側と非公式に外貨取引を行い報告しなかった疑惑や、党予算を流用し縁故組織を支援した情況が確認された。また、妻が運営する“鳳火合作社”を通じ、外国製機材を不正に搬入した事件への関与も浮上した。内部では「彼はもう終わり」との声さえ上がったという。

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それにもかかわらず、李氏は処刑されず、革命化教育という“軽い処分”で済んだ。平壌では「本当に不死鳥だ」と驚きの声が上がっている。

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複数の脱北高官によれば、李氏の“守護神”は金委員長の母である高容姫だった。

李氏は1998~2001年に金日成社会主義青年同盟第1書記を務め、その時期、後継者としての金正恩を支える作業の一環として進められた「高容姫の偶像化宣伝」に深く関与した。高容姫の存在を青年層に浸透させるための象徴作業を主導した人物の一人が李氏だったという。

元高位脱北者はSTの取材に対し、
「高容姫は李日煥を自宅に招き、幼い金正恩と直接、顔見知りにさせた。食事を共にし、贈り物も与えるなど、まるで“家族扱い”だった」
と証言している。

金正恩が権力を継承した後も、この“母の縁”は無視できない保護膜として機能したとみられる。