北朝鮮当局が南北関係を「敵対的な二国家関係」と規定し、いわゆる「統一削除」に動く中、女性組織の講演会で住民の不満が噴出していることが分かった。

北朝鮮の女性団体「朝鮮社会主義女性同盟(以下、女性同盟)」が一部地域で「我が共和国は分断国家ではなく完全な独立国家」「韓国とは一つになれない別の国家であり、統一は不要」などと強調する講演を実施したが、参加者から批判の声が上がったという。

黄海南道のデイリーNK現地情報筋によれば、先月21日、沙里院市の女性同盟組織が上記内容を柱とした政治講演会を開催した。

しかし帰り道に一部の参加者は「つじつまが合わない話だ」と不満を漏らした。「統一は先代指導者たち(金日成・金正日氏)の遺訓だと言ってきたのに、今になって統一は必要ないとはどういうことか」と当局の方針転換に困惑する声もあった。

別の女性同盟員は「統一が実現すれば生活の心配はなくなるのでは」と本音をのぞかせ、また別の参加者は「統一してこそ強国になれる。国家が宣伝している社会主義文明強国は、今のこの国では実現しない」と体制への不満を口にしたという。

(参考記事:北朝鮮警察と「キレた女性」の集団が大乱闘…30人が刑務所へ

北朝鮮は2023年12月に「敵対的二国家論」を初めて公に打ち出し、以来、韓国との民族的同一性や統一を否定する動きを強めている。しかし依然として住民の心理的反発は根強いとみられる。

情報筋は「何十年にもわたり統一は当然の課題だと教えておいて、急に『韓国は同じ民族ではなく統一の対象でもない』と言われても納得できるはずがない」と指摘。「今は一方的な思想教育や講演では人心を掴めず、国家の主張をそのまま信じる人もほとんどいない」と語った。

講演後、一部住民は「南の方(韓国)は大統領が5年ごとに代わり、失脚すれば刑務所にも行く。だが私たちは首領のために命を捧げる闘士ばかりだから永遠に最高指導者が居座る」と、南北の政治体制を比較して独裁体制を皮肉ったという。

情報筋によると、最近の北朝鮮住民は市場を通じた外部情報への関心が高く、他国の体制と自国を比較する発言が増えているとされる。