北朝鮮の社会安全省(警察庁)が、全国の治安機関に対し教化所(刑務所に相当)の満期出所者や病気を理由に仮釈放された者ら、いわゆる「危険分子」への監視を一段と強めるよう指示したことが分かった。来年開催予定の朝鮮労働党第9回大会を前に、体制を揺るがす要因を事前に封じ込めようとする狙いとみられる。

平安北道の情報筋が24日、デイリーNKに明らかにしたところによれば、同道の安全局は今月初め、市・郡の安全部幹部を招集し、刑期を終えた出所者や病保釈者に対する監視を強せよとの社会安全省の指示を伝達したという。

特に今回の対象には、今年10月10日の党創建80周年を機に実施された特別恩赦で釈放された人々も含まれる。恩赦を通じて内部結束を図りながらも、裏では彼らを潜在的な治安不安要素として警戒し、監視網を狭める「二重の姿勢」が浮き彫りになっている。

情報筋によると、対象者が属する人民班(地域組織)を管理する分住所所属の安全員らは、情報提供者(密告網)を総動員し生活動向を逐一把握しているという。

(参考記事:「ヤクザが党幹部を襲撃、殺害」金正恩が国内に厳重警戒を指示

実際、信川市のある人民班には恩赦で釈放された40代男性がいるが、安全部による監視は極めて露骨で、恩赦により社会復帰したとはいえ、「鉄条網なき監獄生活」が続いている状況だと伝えられる。

「その住民は教化所生活の後遺症で顔がむくみ、自宅で治療を受けながらほとんど外出していないのに、担当安全員に加え、普段付き合いの薄い人間までが代わる代わる訪ねてきて様子を探っている。本人は強い疲労感を訴えている」と情報筋は語った。

こうした監視対象者の動向は安全員から分住所長、そして市・郡安全部を経て道安全局へと逐次報告される仕組みになっている。

情報筋は「一般住民ですら一挙手一投足を監視される状況で、教化所出所者や病保釈者といった『危険分子』と見なされている者への監視は言うまでもない」としたうえで、「釈放直後で体調も回復していない人々にまで監視を強めているのは、目に見えない足かせをはめるのと変わらない」と指摘した。

社会安全省の今回の動きは、8回党大会で示された5カ年課題の締めくくりと、来年予定される9回党大会の準備が重なる時期に下されたものだ。情報筋は「大きな政治イベントを控え、体制を不安定にする要素を徹底的に排除しようとしている」と分析する。

また、住民の間では「見えない蜘蛛の巣に掛かったまま、いつ命を奪われるか分からず生きている気分だ」という声も上がっているという。「蜘蛛が張った糸なら見えて避けられるが、人が張った糸は見えず、いつ引っかかるか分からないから余計に怖い」と語る者もいた。

最後に情報筋は、「以前は監視や統制に耐えられなくなれば国境を越えて逃げることもできたが、今はそれすら不可能。互いに信用できず、常に疑いながら生きなければならないのが、この国の現実だ」と厳しい社会状況を嘆いた。