北朝鮮西部の黄海北道で10~16歳の青少年による犯罪が急増しており、当局が「コッチェビ(浮浪児)掃討隊」を稼働させているという。厳しい生活難を背景に、家庭のある青少年までもが生計型盗難や売春に関わる事例が相次ぎ、住民社会に衝撃と不安が広がっている。

デイリーNKの現地情報筋は「道党委員会は10日、青少年犯罪の増加に関する緊急党執行委員会会議を開き、コッチェビおよび青少年犯罪を根絶するため掃討隊を出動させた」と伝えた。道党は掃討隊に来年の朝鮮労働党第9回大会までに関連犯罪を“完全に一掃せよ”と指示したほか、安全部(警察)と教育部による合同の非行集中取り締まり、また学校に通っていない青少年の実態全数調査も命じたという。

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情報筋によれば、最近、黄海北道の農村および山間地域を中心に、10代青少年による生計型窃盗が急増している。困窮した家庭事情から学校に通わず、市場の周辺を徘徊し、老人や商人を狙った盗みを繰り返しているという。

沙里院市、鳳山郡、煙炭郡一帯では、市場やバス停留所など人が混雑する場所で、少年少女が老人や女性を突き倒して荷物や所持品を奪い逃走する事件が頻発。沙里院市では最近、10代の少年3人が60代の老人を押し倒し、財布の金を奪ったうえ、履いていた靴まで奪って逃げる事件が発生し、地域社会に衝撃が広がった。

さらに同市では、10代の少女が家計を支えるため、商人に付き従い雑用を手伝うふりをしながら売春を持ち掛ける事例も散発しており、住民の間で深刻な懸念が高まっているという。

情報筋は「かつては親のいないコッチェビが街をさまよってこうした行為をしていたが、今では親も家もある子どもたちが、飢えた腹を満たすために犯罪に手を染めている」とし、「盗んだ物を親に渡し『これを売ってコメを買って』と言う子どももおり、親たちは叱れず涙を流すほどだ」と語った。

こうした問題を起こし摘発された青少年は、親と共に安全部へ呼び出されることが多く、親が所属組織で公開批判を受ける事例も出ている。最近、煙炭郡では市場で窃盗を働いた15歳の男子生徒が摘発され、その母親が朝鮮社会主義女性同盟(女盟)で公開批判を受けたという。

掃討隊を繰り出した当局のやり方に、住民の反応は批判的だ。情報筋は「子どもたちは食べるものもなく飢えているのに、学校では勉強より農場動員やカンパのノルマばかり強調するから、学校に行かず犯罪に走るのではないかと住民は批判している」と語った。

続けて、「住民の間では『子どもが奈落に落ちている根本原因を解決すべきだ』『皆寒く飢えているのだから生きる道を示さなければならない』『取り締まりばかり続ければ次世代は完全に崩壊する』という声が上がっている」と付け加えた。