北朝鮮の地方で児童の栄養失調が急増し、深刻な社会問題となっていることが分かった。平安南道のデイリーNK内部情報筋によれば、最近、平城市の孤児院「平城中等学園」に入所していた孤児3人が重度の栄養失調で意識不明の状態に陥り病院へ搬送されたものの、相次いで死亡したという。

同学園の児童の多くは、食事量が極端に少なく、生命維持に不可欠なビタミンやミネラルを十分に摂取できていない。その結果、体重減少や強い疲労感、無気力症状が目立ち、たんぱく質不足によって腕や脚の筋肉が著しく減り、脱毛や手足のむくみなど深刻な症状が表れているという。

北朝鮮では、孤児院や寄宿制の学園など集団生活の場で食生活が極めて貧しく、小学校段階の「初等学園」や中学校段階の「中等学園」に入所する孤児たちは、肉や卵などのたんぱく源をほとんど口にできない。栄養価の低いトウモロコシ飯ですら満足に食べられない状況だとされる。

栄養失調は、こうした劣悪な環境に置かれた児童や、軍人・突撃隊員など大規模な集団給食を受ける階層で特に顕著だ。幼児や高齢者にとって栄養不足は致命的であり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなるだけでなく、治癒が遅れる、あるいは不可能となり死亡に至る例も少なくない。

理論上の改善策は単純だ。炭水化物・たんぱく質・脂質をバランスよく摂り、野菜・果物・海藻類を十分に食べることで栄養状態は改善できる。また、医療機関の定期的な観察で早期に異変を発見し、必要な栄養補給を行えば予防も可能だ。

しかし、北朝鮮の現実ではこうした対策を実行することは極めて困難だ。孤児が暮らす初等・中等学園や軍部隊、突撃隊などの集団生活の場では、まともな栄養バランスを確保した食事を提供する体制が事実上存在しない。まともな給料が払われないこうした職場において、給食を扱う部門の担当者は「横流し」に手を染めざるを得ないからだ。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

これは、建設現場などで事故が頻発する背景とも通じている問題だ。しかも、監督者までが加担しているから、是正はほとんど望めない。

(参考記事:「いずれぜんぶ崩壊」金正恩自慢のタワマン、目撃者ら証言

栄養失調の根本原因は単なる物質的欠乏ではなく、まっとうな労働で人々が自ら生活を改善することを許されない腐った社会構造そのものにある。

情報筋は、「子どもが栄養失調で亡くなる悲劇は、硬直した制度と“鉄の檻”のような社会構造がもたらしたものだという認識を持つべきだ」と語る。真の解決策は、人間としての基本的権利である自律性を保障することだとの見方が、内部で静かに広がっているという。