「原潜は冷戦の遺産ではないのか」

韓国国内で、こうした疑問の声が静かに広がり始めている。背景には、AIや無人化技術の急速な発展がある。

文在寅政権時代に議論された軽空母計画の代案として、韓国海軍は昨年、自ら有人・無人統合運用艦(MuM-T Carrier)の構想を発表した。約3万トン級の艦艇に無人航空機や無人水上艇を搭載し、ネットワーク化された戦力として運用する新構想だ。10年前なら「技術的に不可能」とされた案が、今や現実味を帯びている。

対潜戦分野の技術革新も同様だ。米国や中国、ロシアでは、AIを搭載した「ソノブイ(音響探知ブイ)」が開発され、航空機や無人機から大量投下することで広範囲の海域を監視できる。数㎞先の音波を探知できる西側の技術に対し、中国やロシアはより長距離の探知を実現しつつある。価格は1個数百ドル程度と安価で、大量運用が容易だ。

AIと機械学習による音響解析が進めば、従来型原潜の“静粛性の優位”は失われかねない。つまり、巨額を投じた原潜が、安価な無人監視網の前で無力化される可能性がある。

こうした状況に、韓国国内でも「原潜建造の軍事的効用を再検証すべき」との声が上がる。

(参考記事:「米国で建造」「いや国内で」 韓国原潜計画、同盟の歯車かみ合わず混乱

一方で、長時間潜航と戦略的抑止力を評価する意見も根強い。特に北朝鮮のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)開発が進む中で、原潜の必要性を訴える主張もある。

ただし、技術の進化は止まらない。AI・無人化・音響監視技術の進歩が、今後の海中戦の構図を根本から変えるのは確実だ。

韓国が今追うべきは「核エネルギーの夢」か、「次世代の現実」か。その選択が、朝鮮半島の戦略地図を大きく塗り替えるかもしれない。