北朝鮮が中央級病院の医療スタッフを中国に派遣したことが明らかになった。

北朝鮮内部の情報筋が28日に明らかにしたところによると、今月初め、平壌総合病院、金萬有病院、高麗医学総合病院など中央級医療機関から選抜された医師20人余りが中国へ派遣された。派遣されたのは主に内科・外科の専門医で、中国で3~6カ月間の技術研修を受けたのち帰国する予定だという。派遣先の具体的な地域や機関名は確認されていない。

情報筋によれば、朝鮮労働党中央委員会(党中央)は今回の選抜に際し「若手医師を優先して派遣するように」と指示したという。これは医科大学を卒業したばかりの医師に海外経験を積ませ、国際的視野を広げさせるという「党の配慮」を強調する趣旨だったとされる。

こうした背景もあり、北朝鮮の医療関係者の間では今回の派遣事業への関心が非常に高かったという。情報筋は「今回の派遣は外貨稼ぎのためではなく、純粋に医療技術を学ぶ目的で行われるため、経済的負担がなく、誰もが行きたがった」と話す。

従来、北朝鮮の医師が海外に派遣される場合は、労働力の提供を通じた外貨獲得が目的で、国家に一定額を上納する義務が伴った。しかし今回はそうした負担がなく、実地研修を通じて技能を高める「純粋な学習機会」として受け止められているという。

選抜対象となる医師たちは「先進医療技術を直接学べる貴重な機会」としてこの事業を評価している。一方で、北朝鮮内部では「中国の先進医療を学ぶだけでなく、われわれの社会主義的医療制度の優位性を対外的に示す目的もある」との見方も出ている。

情報筋は「平壌総合病院のような中央級病院の医師が派遣されたのは、単に技術移転を目的としたものではない」と強調。「北朝鮮の医療水準を国際的に誇示する政治的意味も含まれている」と述べた。医療レベルの立ち遅れている北朝鮮だが、国内では比較的優秀な人材を海外に派遣し、「このぐらいはできる」ことを見せようとしているという意味だ。

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帰国後、派遣医師らは中国で得た知識や技術を国内の他の医療従事者に共有し、研修や研究活動を通じて医療技術の底上げを図る計画だ。情報筋は「先に学んだ医師たちが帰国後、他の医療陣に教育を行い、その成果を制度的に拡大していくことが党中央の方針だ」と付け加えた。

北朝鮮は近年、医療人材の育成と保健分野の技術革新を国家的課題として掲げているが、慢性的な医療資源不足に直面している。今回の派遣事業は、中国との協力を通じてこうした構造的問題を緩和しつつ、「自主的医療制度の発展」を誇示する一石二鳥の試みといえそうだ。