北朝鮮当局が、ロシア前線に派遣された自国軍兵士の負傷者を極秘裏に分散管理していることが分かった。内部情報筋によると、これらの兵士は現在、平壌郊外や平城(平安南道)、江界(慈江道)、元山(江原道)などの軍直属医療施設で治療・療養中であり、一部は長期入院しているという。

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋は27日、「ロシア戦線に投入された後に負傷した兵士たちは、複数の地域の療養施設で静かに治療を受けている」と述べ、「平壌郊外の軍医療区域、平城と江界の後方病院、元山付近の後送療養所が主要な管理拠点になっている」と明らかにした。

これらの兵士は公式上「戦傷者」として扱われているが、一部は「訓練中の事故者」として行政処理されているという。北朝鮮当局は負傷者数の実態を過小報告することで、軍内部の士気や住民世論への影響を最小限に抑えようとしているとみられる。

情報筋によれば、当局は負傷兵を「英雄」として公に称賛することなく、生活保障を強化しつつも静かに管理しているという。兵士たちは保護対象であると同時に「危険な証人」とも見なされ、周囲の兵士もあえて接触を避ける傾向があるという。療養中の負傷者たちは定期的に思想教育を受け、厳しい秘密保持誓約を課されており、作戦内容や負傷経緯を外部に漏らすことは固く禁じられている。

軍上層部は、回復した兵士の再配置をめぐり、11月中旬までに総政治局・作戦局・軍医局が協議のうえで最終方針を決定する見通しだ。情報筋によれば、当局は一部の戦功者を金日成軍事総合大学や軍事・政治・保衛大学の教官、あるいは大隊級の指導官として任用する案も検討中だという。実際、戦闘経験を持つ兵士が若手部隊の訓練を直接指導する試験的制度も導入されている。

(参考記事:「北朝鮮兵は倒れるまで殺戮を続けた」ウクライナ軍将校がクルスクで見たもの

こうした動きは、金正恩総書記が強調してきた「実戦型訓練強化」方針の延長線上にあり、同時に「国際戦経験世代」を新たな軍事的象徴として打ち出す狙いもあるとみられる。

情報筋は「北朝鮮とロシアの協力は、単なる兵器取引を超え、戦闘経験を通じた軍の実戦能力強化段階に入っている」と述べ、「今回の負傷兵管理と再配置はその一環であり、戦場で得た教訓を軍の訓練体系や教範に反映させ、指揮・戦術の実効性を高めようとするものだ」と分析した。