北朝鮮に戻った脱北者、いわゆる再入北者らが再び北朝鮮を脱出する事件が相次いでいる。脱北後に韓国に入国したが、再び北朝鮮に戻り1月に北朝鮮で記者会見を行ったキム・グァンホさん一家。一家は再度脱北し、中国の延吉に潜伏していたところを中国公安当局に逮捕された。また、キムさんとともに記者会見を行ったコ・ギョンフィさんも脱北を試みたが失敗し、北朝鮮の保衛部(秘密警察)に逮捕されたことが明らかになった。

北朝鮮人権改善会のキム・フィテ事務局長は15日、デイリーNKに「キム・グァンホさんは夫人と娘のほか義弟と義妹と共に脱北したが、延吉で中国公安警察に逮捕された」と話した。開かれた北韓放送は9日、「コさんも脱出に成功したが、息子と娘を脱北させるために両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の川向うの吉林省長白朝鮮族自治県で電話をかけたところ、位置を追跡され保衛部に逮捕された」と伝えた。

デイリーNKの内部情報筋もこの事実を確認した。

「コさんは、当局が準備した恵山(ヘサン)市内の高級住宅への入居を断り、国境沿いの江口洞(カングドン)にある民家に住み、中国と連絡を取り合いながら脱北を準備していた」(情報筋)

今年1月に北朝鮮に戻り、記者会見まで開いたキムさんとコさんが再び脱北したことで、彼らが北朝鮮に戻ったのは当局の圧力によるものではないかという疑惑が高まっている。

キムさん夫婦は記者会見で「南朝鮮(韓国)は実に汚い社会」「詐欺が蔓延する険悪な社会では到底暮らしていけなかった」と述べた。コさんも「腐りきった悪夢のような南朝鮮を出て北朝鮮に戻った、罰を受けて当然の私を寛大にも温かく受け入れてくれた」と述べた。

保衛部は昨年から彼らを北朝鮮に連れ戻すための懐柔工作を積極的に展開してきた。脱北者管理を担当する韓国政府の部署は、韓国国内の脱北者に対し、「北朝鮮にいる知人から『国境で会おう』『戻ってきても処罰されない』という言葉に惑わされてはいけない」と警告を発してきた。

自由北韓放送のイ・ソギョン局長は「韓国で自由を経験した脱北者が、抑圧された北朝鮮に戻り、韓国を非難する記者会見を開くのは、当局の強要なしにははありえない。北朝鮮当局の懐柔、工作、強制記者会見の真相を明らかにしなければならない」と述べた。

イ局長はまた、北朝鮮に子どもを残したまま脱北した女性に対し、子どもを人質にした懐柔工作まで行われており、イ局長と親しい脱北女性のもとにも実の姉から「戻ってくれば全て許され子どもたちと一緒に暮らせるようにすると保衛部と約束した」との電話がかかってきたと明らかにした。

今回の事件は金正恩体制下の住民への監視が以前とは異なり、かなり雑になっていることの証明だとの指摘も出ている。金正恩氏が国境警備を強化し、脱北を試みる者には過酷な処罰を与えるとしたが、実際には下部単位の監視網は以前ほどではないといえる。

別の脱北者は「北朝鮮に戻った脱北者らは『自由』に対する熱望を持っている。また自身と家族には将来がないことを承知しているため、いくら監視が厳しくても隙を狙って脱出を試みたと思われる。当局は北朝鮮に戻り会見まで行った脱北者らが再び脱出したことが住民に知られないよう努力するだろう」と話した。

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